2024 年 42 巻 3 号 p. 256-262
概要:緒言:中腎様腺癌(Mesonephric-like Adenocarcinoma:MLA)は,子宮体部,卵巣に発症する稀な疾患であり1),その形態の多様性から診断が困難である2).今回我々は,類内膜癌から発生した可能性が示唆されたMLAの一例を経験したため,形態学的,免疫組織学的検討を踏まえて報告する.
症例:71歳,6妊1産.性器出血を認め,当院救急搬送となった.子宮内腔に45 mm×35 mmの腫瘤を認め,子宮体癌が疑われた.遠隔転移や病的リンパ節腫大は認めなかった.子宮内膜細胞診は陽性,子宮内膜組織診より類内膜癌が疑われた.子宮体癌IA期推定の診断で全腹腔鏡下子宮全摘術,両側付属器切除術を施行した.病理検査にて,異型細胞が多彩な形態像を示し,TTF-1,GATA3,CD10が陽性,ERが一部陽性,PR陰性であり,一部類内膜癌と連続するようにMLAを認め,類内膜癌からMLAが発生したことが示唆された.
結論:MLAは稀な疾患であるが,その発生についてはコンセンサスが得られておらず1),更なる症例の蓄積が必要である.