日本婦人科腫瘍学会雑誌
Online ISSN : 2436-8156
Print ISSN : 1347-8559
42 巻, 3 号
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原著
  • 谷川 輝美, 西野 翔吾, 一木 愛, 豊原 佑典, 菅野 素子, 根津 幸穂, 伏木 淳, 青木 洋一, 尾身 牧子, 岡本 三四郎, 野 ...
    2023 年42 巻3 号 p. 243-249
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

    概要:目的:進行・再発卵巣癌患者に対するPARP阻害薬(PARPi)維持療法別の有害事象について検討することを目的とした.

    方法:2019年から2022年にPARPi維持療法を行った進行・再発卵巣癌患者を対象とした.オラパリブ維持療法(O群),ニラパリブ維持療法(N群),オラパリブ・ベバシズマブ併用維持療法(P群)別の中断,減量,中止の割合,grade(G)3以上の血液毒性の発生割合を検討した.

    結果:対象症例は319例であった.初回治療における中断,減量,中止の割合(%)はO群,N群,P群において,中断60/72/69(NS:not significant),減量42/47/51(NS),中止6/7/2(NS)であった.G3以上の有害事象は貧血15/12/12(NS),好中球減少15/16/10(NS)であった.血小板減少は0/10/0(p=0.009)であり3群間に有意差を認めた.

    結論:3群間において中断,減量,中止の割合には有意差を認めなかった.G3以上の血小板減少に有意差が認められた.いずれのPARPi維持療法も安全に施行できると考えられた.

  • 樋口 渚, 杉浦 敦, 中谷 真豪, 竹田 善紀, 新納 恵美子, 伊東 史学, 谷口 真紀子, 佐道 俊幸, 喜多 恒和
    2023 年42 巻3 号 p. 250-255
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

    概要:プラチナ製剤は婦人科悪性腫瘍に対するkey drugであるが,投与回数の増加に伴い,特にカルボプラチン(carboplatin:CBDCA)に対する過敏性反応(hypersensitivity reaction:HSR)をしばしば経験する.今回,CBDCAにHSR既往のある患者に対する,CBDCA脱感作療法とシスプラチン(cisplatin:CDDP)脱感作療法の安全性を比較検討した.CBDCAにHSR既往のある全14例に対し,CBDCA脱感作療法を7例(38サイクル),CDDP脱感作療法を7例(30サイクル)施行した.完遂率はそれぞれ86.8%,100%で,CDDP脱感作療法で過敏症を再発症することはなかった.婦人科悪性腫瘍においてCBDCAへのHSRによりプラチナ製剤投与が制限されることは,著明な予後短縮につながる可能性がある.安全性に十分注意する必要はあるが,薬理作用機序からもCBDCAにHSR既往のある患者に対するCDDP脱感作療法を選択肢のひとつとして提案する.

症例報告
  • 谷口 智紀, 大槻 健郎, 佐藤 綾華, 村川 東, 佐々木 恵, 星合 哲郎, 早坂 篤
    2024 年42 巻3 号 p. 256-262
    発行日: 2024/07/25
    公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

    概要:緒言:中腎様腺癌(Mesonephric-like Adenocarcinoma:MLA)は,子宮体部,卵巣に発症する稀な疾患であり1),その形態の多様性から診断が困難である2).今回我々は,類内膜癌から発生した可能性が示唆されたMLAの一例を経験したため,形態学的,免疫組織学的検討を踏まえて報告する.

    症例:71歳,6妊1産.性器出血を認め,当院救急搬送となった.子宮内腔に45 mm×35 mmの腫瘤を認め,子宮体癌が疑われた.遠隔転移や病的リンパ節腫大は認めなかった.子宮内膜細胞診は陽性,子宮内膜組織診より類内膜癌が疑われた.子宮体癌IA期推定の診断で全腹腔鏡下子宮全摘術,両側付属器切除術を施行した.病理検査にて,異型細胞が多彩な形態像を示し,TTF-1,GATA3,CD10が陽性,ERが一部陽性,PR陰性であり,一部類内膜癌と連続するようにMLAを認め,類内膜癌からMLAが発生したことが示唆された.

    結論:MLAは稀な疾患であるが,その発生についてはコンセンサスが得られておらず1),更なる症例の蓄積が必要である.

  • 渡邊 碧, 首藤 聡子, 橋本 大樹, 山口 正博, 川端 公輔, 箱山 聖子, 早貸 幸辰, 平山 恵美
    2023 年42 巻3 号 p. 263-271
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

    概要:Lazarus型反応は,PS不良な終末期患者において,免疫チェックポイント阻害薬などが著効し全身状態が急速に改善することを指す.今回我々はPS不良な化学療法抵抗性子宮体癌においてペムブロリズマブ単剤投与が著効しPSの改善と寛解を得て,Lazarus型反応と考えられる症例を経験したので報告する.症例は43歳女性,0妊.特記すべき既往歴・合併症なし.過多月経・月経困難症のため当院初診.画像上子宮体部に主座を持ち子宮頸部に進展する腫瘍を認めた.子宮内膜組織診は類内膜癌Grade 3であり,高位傍大動脈リンパ節転移を認め子宮体癌IIIC2期と診断した.術前化学療法としてパクリタキセル・カルボプラチン療法を施行したが腫瘍は縮小せず,腫瘍減量手術,術後化学療法を施行するが病勢は増悪,骨盤壁への腫瘍浸潤による癌性疼痛のためPS 4に陥った.患者はベストサポーティブケアへの方針転換を希望せず腫瘍がミスマッチ修復機能欠損であったためペムブロリズマブ投与を開始した.免疫関連副作用へのステロイド投与と癌性疼痛,全身状態の管理下に3コース目の治療後PSの劇的改善を認めた.現在患者はP S0, 寛解を維持している.

  • 加藤 じゅん, 桝本 咲子, 成之坊 果代, 小林 寛人, 堀 芳秋, 田中 政彰
    2023 年42 巻3 号 p. 272-277
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

    概要:癌肉腫は癌腫成分と肉腫成分からなる稀な悪性腫瘍である.近年,肉腫成分は癌腫成分を起源として発生すると考えられている.癌肉腫には明確に確立された治療法はなく,予後は不良である.

    我々は漿液性卵管上皮内癌(STIC)と大網癌肉腫が共存した症例を経験した.取扱い規約に従い,STICが原発巣となって大網に転移したものと判断した.患者はBRCA2病的バリアント保持者であった.ドセタキセル及びカルボプラチンによる術後補助化学療法の後,オラパリブによる維持療法を24カ月継続し,再発なく順調な経過を辿っている.オラパリブはBRCA病的バリアント陽性癌肉腫の治療に有効である可能性がある.

  • 荻本 圭祐, 澁谷 剛志, 小松 正人, 籏谷 雄二, 佐久間 淑子, 山口 聡
    2023 年42 巻3 号 p. 278-284
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

    概要:Malignant struma ovarii(MSO)はまれな腫瘍であり,その希少さゆえに標準治療は確立されていない.

    症例は39歳.34歳で帝王切開術施行の際に左卵巣嚢腫を指摘され,腫瘍壁の組織診を施行したところ卵巣甲状腺腫であった.経腟エコーおよびMRIで腫瘍の著明な増大と充実成分の出現を認め,血液検査でサイログロブリンが878 ng/mlと上昇していたことからMSOを疑い,腹式単純子宮全摘術+両側付属器摘出術+大網切除術を施行,さらに腹腔内の播種疑い病変をすべて切除し,肉眼的残存腫瘍なく完遂した.病理組織診では左卵巣は成熟した甲状腺組織,右卵巣は甲状腺乳頭癌であった.大網,S状結腸間膜,直腸表面,回腸間膜に認めた播種疑い病変はすべて左卵巣と同様であった.術後1年5カ月に腹腔内の多発腫瘤を認めMSOの再発と診断した.甲状腺摘出と放射性ヨウ素治療で再発腫瘍は著明に縮小し,その後も再発腫瘍は縮小を維持している.

    腹腔内にimplantする甲状腺組織は病理学的に良性であっても臨床的には悪性の経過を辿る可能性がある.また進行・再発MSOに対して放射性ヨウ素治療が有用である可能性が示された.

  • 藤﨑 碧, 大西 淳仁, 佐藤 謙成, 大澤 綾子, 圓﨑 夏美, 吉本 望, 川越 靖之, 永井 公洋, 桂木 真司
    2023 年42 巻3 号 p. 285-291
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

    概要:子宮頸癌において初回治療で放射線照射歴のある症例では,再発した場合その場所が照射野内か照射野外かが治療法の選択ならびに予後に重要である.照射野内の再発部位への再照射は,合併症等から限定的であり,その他の有効な治療法が限られるため生存期間が短い.選択される治療法は化学療法が中心であり,近年では免疫チェックポイント阻害薬が有効な薬剤として注目されている.手術療法はあくまでも限定的であり,骨盤除臓術,salvage hysterectomy+lymphadenectomyやsalvage lymphadenectomyなどが報告されている.骨盤除臓術はある程度の根治性は担保されるものの,患者への侵襲,機能損失が大きい術式であり,限られた症例にのみ適応となる.一方でsalvage hysterectomy+lymphadenectomy,lymphadenectomyは報告例も少なく,根治性よりもQOLを重視した治療法といえる.今回われわれは,子宮頸癌の照射野内リンパ節再発に対して,腫瘍の摘出のみを目的とする外科的介入を行い,患者への侵襲を軽減しなおかつ良好な結果を得られた5症例を経験したので報告する.

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