日本婦人科腫瘍学会雑誌
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Print ISSN : 1347-8559
症例報告
Malignant struma ovariiの腹腔内再発に対して放射性ヨウ素治療が奏効した1例
荻本 圭祐澁谷 剛志小松 正人籏谷 雄二佐久間 淑子山口 聡
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2023 年 42 巻 3 号 p. 278-284

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抄録

概要:Malignant struma ovarii(MSO)はまれな腫瘍であり,その希少さゆえに標準治療は確立されていない.

症例は39歳.34歳で帝王切開術施行の際に左卵巣嚢腫を指摘され,腫瘍壁の組織診を施行したところ卵巣甲状腺腫であった.経腟エコーおよびMRIで腫瘍の著明な増大と充実成分の出現を認め,血液検査でサイログロブリンが878 ng/mlと上昇していたことからMSOを疑い,腹式単純子宮全摘術+両側付属器摘出術+大網切除術を施行,さらに腹腔内の播種疑い病変をすべて切除し,肉眼的残存腫瘍なく完遂した.病理組織診では左卵巣は成熟した甲状腺組織,右卵巣は甲状腺乳頭癌であった.大網,S状結腸間膜,直腸表面,回腸間膜に認めた播種疑い病変はすべて左卵巣と同様であった.術後1年5カ月に腹腔内の多発腫瘤を認めMSOの再発と診断した.甲状腺摘出と放射性ヨウ素治療で再発腫瘍は著明に縮小し,その後も再発腫瘍は縮小を維持している.

腹腔内にimplantする甲状腺組織は病理学的に良性であっても臨床的には悪性の経過を辿る可能性がある.また進行・再発MSOに対して放射性ヨウ素治療が有用である可能性が示された.

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© 2023 日本婦人科腫瘍学会
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