2005 年 39 巻 2 号 p. 3-10
物理法則に則ったコンピュータシミュレーションによって生成された物体運動は, しばしば観客にとって不自然なものに映ることがある.アニメーションの中で用いられる誇張表現は, 映像表現における演出的な効果を受け持つだけではなく, こうした観客の持つ違和感を打ち消すのに役立つ.こうした現象は, 物理法則的な物体運動と, 人間が知覚しうる物体運動の間に何かしらの差異があると考えることによってうまく説明できる.物理法則には必ずしも則っていないが, 人間がリアルに感じる動きのことを本研究では「メンタルモーション」と呼ぶこととした.本論文では, モーションキャプチャシステムを用いて得られた, 物理的に正確な動作を用いて, メンタルモーションを生成する動作誇張手法を提案する.