抄録
本稿の目的は,病院経営の競争優位の源泉を,戦略グループ間の移動障壁の探求によって検証することにある。わが国の病院経営は,様々な規制から自由競争は制限されているものの,必要な経営資源は,市場取引を通して確保するため,魅力的な病院には経営資源が集まり,魅力に乏しい病院からは経営資源が流出する。そして地域の患者のための病院設備や医療機器を購入する源泉である医療経営による利益を得ることが必要である。このような特徴を持つわが国の病院経営において,病院間に利益格差をもたらす要因である競争優位の源泉を,医療業界内戦略グループ間の「移動障壁」の探求によって検証することが本稿の目的である。
本稿は,日本赤十字病院を対象に,平成19年度から平成23年までの5期間において,多変量解析を用いて上位病院群と下位病院群の変数の平均値の差異を検証することで病院間に利益格差によって生じる「移動障壁」の要因を考察した。
その考察結果は,内部経営資源として,病院の規模と,医師が多く勤務していることと,組織能力のうち,病院経営全般に係わる「マネジメント能力」の差が,病院間に利益格差をもたらす「移動障壁」の要因であることを探ったものである。