2018 年 55 巻 1 号 p. 27-35
介護老人保健施設(以下,老健)が果たす役割と,有料老人ホームおよびサービス付き高齢者向け住宅(以下,高齢者住宅等)の整備状況との関係を検討することを目的とし,全国343の二次医療圏ごとに1施設ずつ無作為に抽出した老健の相談員等を対象に郵送自記式質問紙調査を行い,100施設(29%)の協力を得た。回答施設が属する二次医療圏における後期高齢者数に対する高齢者住宅等の定員数との関係を分析したところ,在宅復帰率・ベッド回転率・入所者に占める在宅復帰困難者全体の割合,いずれも相関を認めなかったが,在宅復帰困難者の中でも,経済的な事情により居宅生活を希望しない者が入所者に占める割合とは,正の相関を認めた(ρ=0.225, p<0.05)。高齢者住宅等が多い地域の老健には,経済的な事情で居宅生活を希望しない入所者が多いこと,老健のベッド回転率や在宅復帰率の向上に繋げる上で,近隣の高齢者住宅等の自己負担額とのギャップが影響しうるということが示唆された。