2026 年 63 巻 2 号 p. 37-45
看護業務の安全性向上は重要な課題であるが,多くの先行研究は組織単位の分析にとどまり,看護師の個人特性や業務負荷が安全性に与える影響の検証は不十分である。本研究では,東京都内の二次救急病院の看護師35名を対象に,2024年4月から2025年3月までの365日間にわたる456,040件の電子カルテ記録と2,208,107分の勤務記録から単位時間業務量を算出して看護師の業務負荷の基準とし,集団および個人の単位時間業務量と看護師の個人特性がインシデントの発生に与える影響を,マルチレベルロジスティック回帰分析により評価した。分析の結果,集団では業務負荷が増加することでインシデント発生が有意に増加する(p=0.002)傾向が認められたが,個人では関連は確認されなかった。さらに,安全性に影響する個人特性も特定され,現場負担の少ない業務量調査手法としての実用性や,看護師配置指標への応用可能性が示唆された。