抄録
本稿は近年の医療において重視されつつあるケアに基づいて専門職制度が要請されるのはなぜかを明らかにすることを目的としている。そのため本稿ではパーソンズの議論にA病院での調査研究に基づき批判的に再検討を加えていく。そこから明らかになるのは以下の通りである。まず、ケアが特定の領域に限定されない働きかけであるが、にもかかわらず対象者である患者自身が看護職によって完全にはコントロール可能な存在ではないことから、看護職は自らの機能と役割を限定化せざるを得ない。そしてその限定化が患者の様々な側面を考慮に入れつつなされる「恣意的」な性格を有しており、個々の限定化の妥当性評価を患者にだけ求めることは出来ないため、看護職は自らの同僚に妥当性評価を求め、さらにはその信憑性を高めるために専門職としての制度化を求める。本稿はこのようにケアに基づいて専門職像を新たに再構築していくための試論である。