昭和学士会雑誌
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原著
血中循環腎癌細胞回収についてOn-chip SortとClearCell FXシステムとの比較検討
松井 祐輝直江 道夫太田 実香下山 英明鵜木 勉中里 武彦押野見 和彦森田 順前田 佳子冨士 幸蔵小川 良雄
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2018 年 78 巻 2 号 p. 142-148

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抄録

現在,がんの治療は目覚ましい進展を遂げている.疾患経過の様々な時点で迅速かつ低侵襲的にバイオマーカーを同定することは,治療効果と予後を評価または予測する一助となる.近年は組織生検に代わる方法として「Liquid biopsy」に対する注目が大きく高まっている.この「Liquid biopsy」の一つに,血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells:CTCs)がある.転移性癌患者の血液中にはCTCsと呼ばれるがん組織由来の細胞が微量に循環していることが知られている.血中に存在するCTCsの数を測定することは,転移性癌に対する治療効果の判定や病勢把握に有用である.CellSearchシステムは,米国FDA(Food and Drug Administration)の承認を受けた唯一のCTCs検出装置である.CTCs検査は,転移性大腸癌,乳癌,前立腺癌の治療効果の判定や予後予測因子としての有用性が認められている.しかし,CellSearchシステムはEpCAM (Epithelial cell adhesion molecule;上皮細胞接着分子)の抗体を用いた免疫磁気的手法に基づくため,EpCAM非発現細胞の捕捉が困難な点が近年指摘されている.今回,EpCAM非依存的にCTCsを同定する方法として,腎癌特異的なG250抗原をターゲットとしたOn-chip SortとClearCell FXシステムを用い,CTCsの捕捉回収率を比較検討した.On-chip Sortによる腎癌CTCsの回収率は75%程度であったのに対し,ClearCell FXシステムの場合は33%〜69%であった.腎癌CTCsの同定において,G250抗原をターゲットとしたEpCAM抗原に非依存的なOn-chip Sortシステムが,ClearCell FXシステムに勝っていた.

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