2020 年 21 巻 1 号 p. 20-25
【背景】遺伝性乳がん卵巣がん(hereditary breast and ovarian cancer;HBOC)診療の一部が保険適用となり,保険診療を中心に行う病院でもHBOC診療が可能となった.【目的】遺伝診療導入に向けて電子カルテ上の遺伝情報の取り扱い方法策定の過程を中心に,さいたま赤十字病院のHBOC診療の取り組みについて述べる.【方法】遺伝情報取り扱い方法の試行・検討過程と院内の遺伝情報の適切な取り扱い方法の周知について後方視的に記述する.【結果】院内で新たに設置された遺伝診療部会を中心に,遺伝学的検査の結果の電子カルテ上での取り扱いについて検討した結果,全職員の倫理観の向上に努めることを前提に通常の医療情報と同様に扱うこととなった.倫理観向上のために,ガイドラインを用いた職員間での知識の共有の徹底,電子カルテ上へのログイン記録の表示,HBOC診療導入に至る検討内容の公開を実施した.【考察】遺伝診療にかかわる職員への継続的な啓蒙が重要であると思われた.