2021 年 21 巻 1 号 p. 26-30
【背景】遺伝性疾患が疑われる褐色細胞腫の診断およびその後のサーベイランスには,遺伝学的検査が有用である.今回われわれは若年発症および再発のため遺伝学的検査を行いvon Hippel-Lindau(VHL)病と診断した後,ステロイド内服下で妊娠・出産に至った1例を経験したので報告する.【症例】症例は35歳,女性.13歳時に両側褐色細胞腫と診断,両側副腎摘出術および右副腎皮質自家移植が施行された.33歳時転居に伴い名古屋第一赤十字病院内分泌内科紹介となった.安静時の採血・採尿にてカテコラミン高値を認めた.腹部CT検査にて上腸間膜動脈分岐部から腎下極レベルの大動脈左側に複数の腫瘤,131I-MIBGシンチグラフィで同部位への集積を認め,褐色細胞腫の再発と診断し,腫瘤摘出術を施行した.病理学的にはcomposite paraganglioma-ganglioneuromaであった.遺伝学的検査を施行しVHL遺伝子に c.191G>C(p.Arg64Pro)病的バリアントを認め,VHL病と診断した.診断時期と同じころ妊娠が判明したが,デキサメタゾン0.25mg,ヒドロコルチゾン10mgの内服を継続し,出産に至った.