遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
症例報告
乳癌術式決定に遺伝学的検査が有用であった遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の一卵性双生児症例
阿左見 亜矢佳勝部 暢介赤間 孝典長塚 美樹岡野 舞子松嵜 正實片方 直人立花 和之進大竹 徹野水 整
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2021 年 21 巻 2 号 p. 41-46

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抄録

 近年BRCA1/2の生殖細胞系列の病的バリアントに起因する遺伝性乳癌卵巣癌(hereditary breast and ovarian cancer; HBOC)に関心が高まってきている.BRCA遺伝子病的バリアント保持者には癌を発症する前のリスク低減卵巣卵管摘除(risk reducing salpingo-oophorectomy; RRSO)やリスク低減乳房切除術(risk reducing mastectomy; RRM)が勧められている.今回われわれは一卵性双生児の乳癌症例に対し,HBOCが疑われたため,術前に施行したBRCA遺伝学的検査が術式決定に有用であった症例を経験した.双生児姉が乳癌を発症し,続いて双生児妹が乳癌を発症した.姉の乳癌発症によって,妹の乳癌に対してHBOCが疑われた.妹のBRCA1遺伝子病的バリアント陽性を確認し,乳癌手術に加えて,対側RRMを施行した.HBOCの乳癌が疑われる症例では,乳癌の術式決定に遺伝学的検査が有用である.HBOCにおいては乳癌,卵巣癌発症リスクおよびリスク低減手術について,十分な情報提供がなされるべきであると考える.

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© 2021 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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