遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
原著
遺伝性乳癌卵巣癌症候群と診断された乳癌罹患患者のリスク低減卵管卵巣摘出術後の思い
今井 芳枝阿部 彰子村上 好恵武田 祐子川崎 優子板東 孝枝高橋 亜希井上 勇太阪本 朋香吉田 加奈子
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 22 巻 3 号 p. 68-74

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抄録

 本研究は,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome;HBOC)と診断された乳癌罹患患者のリスク低減卵管卵巣摘出術(risk reducing birateral salpingo-oophorectomy;RRSO)後の思いを明らかにすることを目的とした.対象者は,HBOCと診断された乳癌罹患患者でRRSO後の20歳以上の成人患者12名とし,半構造化面接方法でデータ収集をした.結果,HBOCと診断された乳癌罹患患者のRRSO後の思いとして【がんという恐怖から解き放たれて安らいでいる】【タイミングがよかったので、手術を決心できた】【後続の人のために自分の手術経験を役立てる】【RRSOが終わった今だからこそ身内のがんに向き合う】【手術をしても自分の状態を思い煩う】【手術で卵巣を取り除いたことに負い目がある】の6つのカテゴリーが導き出された.HBOCと診断された乳癌罹患患者はRRSOの意義を十分に理解しており、RRSOは自身のがんのリスク低減だけではなく身内のためでもあり,HBOCの家系が関わる遺伝の特徴が見出されていた.一方で、RRSO後にも自分の身体状態に対して不安や心配などネガティブな心情を持ち続けていたことが示された.

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© 2023 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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