遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
特集
HBOC診療における膵腫瘍のマネジメント
阿部 紘大北郷 実小林 佑介増田 健太関 朋子小坂 威雄小野 伊久美三須 久美子中村 康平内田 明花舩越 建竹内 麻理小崎 健次郎青木 大輔北川 雄光
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2023 年 23 巻 1 号 p. 12-16

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抄録

 BRCA1病的バリアント保持者の1~3%およびBRCA2病的バリアント保持者の2~7%が生涯で膵癌を発症することが知られている.このような遺伝性膵癌家系や家族性膵癌家系を膵癌ハイリスク群としてリクルートし,磁気共鳴胆管膵管造影(Magnetic Resonance Cholangiopancreatography; MRCP)や超音波内視鏡検査(Endoscopic Ultrasound; EUS)でサーベイランスを行うことで,膵癌の早期発見率の向上および生命予後延長が示されてきた.そのため,『遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン 2021年版』1)では,家族歴が濃厚な膵癌家系やBRCA1/2を含む計10遺伝子の病的バリアント保持者に対する膵臓サーベイランスが推奨されている.当院では,2021年4月に産婦人科(婦人科,生殖班),一般・消化器外科(乳腺班,肝胆膵班),泌尿器科,臨床遺伝学センター,腫瘍センターの診療7部門によりHBOCセンターを設立し,同年10月より皮膚科と精神・神経科も参画し,現在9部門で運営している.膵臓サーベイランスは年に1〜2回のMRCPまたはEUSを行っており,そのサーベイランスのなかで発見される膵癌前癌病変の膵管内乳頭状粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm; IPMN)に着目し,環境因子・遺伝因子のリスクや相互作用を探索するだけでなく,IPMNが悪性化する前の早期発見や予防に取り組んでいる.2021年1月より乳癌や卵巣癌だけでなく膵癌に対しても生殖細胞系列BRCA1/2検査がpoly ADP-ribose polymerase(PARP)阻害薬のコンパニオン診断として保険適用となり,当院でも膵癌患者に検査が普及しつつあるが,適用はいまだに治癒切除不能膵癌に限定されており,HBOCの診断や膵癌サーベイランスに対しては保険未収載である.われわれはBRCA1/2検査や遺伝学的検査の普及に努めるとともに,遺伝カウンセリングも併用しながら膵癌ハイリスク家系全体でHBOCと同様に予防および早期発見につなげていく必要性が高いと考えている.

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© 2023 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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