抄録
【目的】サッチャインチの完熟種実を圧搾して得られるグリーンナッツオイル(以下GNOと記す)は,ω3系脂肪酸であるα-リノレン酸とγ-トコフェロールを豊富に含む。この油は生体に対する高い抗酸化力と,DNAの酸化損傷抑制力を有することを以前発表者らは報告した。一方,一般にω3系脂肪酸を豊富に含む油脂は加熱や光に弱く,保存や調理の際の酸化が問題となる。GNOと同様にω3系脂肪酸の豊富なアマニ油,エゴマ油について紫外線照射と加熱を行ったところ,いずれもGNOの劣化度が最も低かった。そこで,このGNOを実際に利用するに当たり,より適した調理法を開拓することを目的に検討を行った。
【方法】試料にはGNO,アマニ油,エゴマ油の3種を用いた。これらを各々フライパンで80~180℃,10分間加熱した。保存中の光の影響は,2000luxの光を0~2週間照射し,これらの過酸化物価(POV),カルボニル価(CV)を測定した。加熱油は,ガスクロマトグラフィーにより脂肪酸組成を定量した。一方,これらの結果を基に,GNOに適した調理法を検討した。一部は調理後の油を抽出し,劣化度を比較した。
【結果】10分間,140℃までの加熱では,GNOが最も劣化度が低かった。脂肪酸は加熱温度が高くなるにつれ減少し,α-リノレン酸・リノール酸ではその傾向が大きかった。実際の調理では,高温となる揚げものには適さず,非加熱で用いるタレ・ドレッシングはもとより,比較的低温短時間の加熱調理に適していると考えられた。パンなど水分を含んだ食材と共に加熱する場合は,オイルそのものを加熱する場合よりも高温に耐え,また,肉まん等蒸気で加熱する場合は,周囲の温度も100℃を超えず,好ましい調理法と考えられた。