遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
症例報告
再発虫垂癌に対する包括的がんゲノムプロファイリング検査の二次的所見としてLynch症候群および遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)と診断された1例
上原 圭森川 真紀畠山 未来森田 真未佐原 知子山口 達郎山田 岳史
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2024 年 24 巻 1 号 p. 107-110

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抄録

 症例は64歳の女性.母親と次兄が大腸癌,母方伯父が胃癌に罹患している.限局性腹膜播種を伴う虫垂癌(pT 4aN0M1c)に対して回盲部切除術を行い,術後補助化学療法を施行した.術後1年半の検査で卵巣転移が疑われたため,両側付属器切除を行い,虫垂癌の卵巣転移および腹膜播種と診断された.薬物療法開始とともに,包括的がんゲノムプロファイリング検査を行ったところ,TMB-Highでpembrolizumabの投与が可能となったが,同時にMSH6およびBRCA2遺伝子に病的バリアントを認めた.遺伝学的検査にてMSH6およびBRCA2遺伝子ともに生殖細胞系列の病的バリアントであることが確認され,Lynch症候群および遺伝性乳癌卵巣癌と診断された.

 包括的がんゲノムプロファイリング検査の普及に伴い,二次的所見から遺伝性疾患が発見される事例はますます増加すると思われるが,2つの遺伝性疾患が同時に見つかるdual genetic diagnosisの報告はいまだ少ない.

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© 2024 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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