本研究では,過去数年間の気象データをもとに簡易的な手法により実蒸発散量を求め,この結果と降水量データを用いてアジアの大都市における水資源賦存量の推定を行った。可能蒸発散量の推定にはHamon式を用いたが,熱帯地方ではPenman式と比べると推定値にかなりの差が生じたため,Hamon式とPenman式による可能蒸発散量の直線回帰式を求め,Hamon式による推定値を補正した。アジアの大都市における水資源賦存量は,総量でみると豊富だが,一人当たりでみると非常に少ないことが明らかになった。都市の人口,市域面積の定義の仕方によっても水収支の計算結果は影響を受けるが,本研究のように簡易な方法でアジアの大都市における水収支を把握したのち,都市活動に伴う水利用との関係を整理することは水資源の有効利用を検討する上で有効であると考える。