水文・水資源学会研究発表会要旨集
水文・水資源学会2018年度研究発表会
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【河川・湖沼】
長崎県島嶼の水環境と形成要因について
*小寺 浩二矢巻 剛堀内 雅生浅見 和希猪狩 彬寛
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キーワード: 五島列島, 対馬, 壱岐, 平戸, 水質
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p. 202-

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抄録

1.はじめに
  日本には、数多くの島嶼が存在し、独立した環境のため独特の生態系や文化を形成している。島嶼の水環境を変化させる要因は、風によって運ばれた海塩、降水、島の地理的位置、島の形状や標高差、地質、土地利用など様々である。しかし、調査・研究されている島々には地理的な偏りがある。壱岐・対馬・五島列島・平戸諸島といった日本海側の島嶼における、特に水文に関する研究は少なく、水環境が明らかとは言えない。2012 年から五島列島の調査を始め、対馬、壱岐、平戸と研究を進め、季節変化や海塩の影響をはじめとした各島の特徴が明らかになってきた。今回は、各地域の水環境について、地形・標高・土地利用との関係などから明らかにする。
2.結果・考察
  ほぼ全ての島で海塩の影響が見られたが、海塩以外の要因が卓越した地点も少なくない。五島列島では福江島でCa-HCO3型で地質の寄与が強く見られる地点があり、硝酸が多く検出された。壱岐では農業の影響がEC やTOC に現れているが、硝酸の影響がほぼない。壱岐では水田が、五島列島では畑地が卓越していることに要因があると考えられる。また、壱岐は上流部と下流部の間での水質組成の変化が比較的少なく、河床勾配が比較的緩いことや、上流部で農業用水に地下水が利用されている影響が考えられる。対馬は、急峻な地形で河川水の流下速度が速く短いため、EC や溶存成分濃度が比較的低く、流下に伴い濃度が増加し、水質形成もカルシウムや重炭酸イオンの濃度が増加していた。下島西部と上島東部では、特に風送塩の影響が顕著で、季節変化も大きく現れた。上島の舟志川の支流では、EC が1000μS/cm を超える地点が見られたが、周辺で海岸のごみを埋め立てているという情報があり、ナトリウム・塩化物イオンが濃い水質組成であることから周辺では地下水汚染が起こっていると考えられる。平戸諸島では特に南部においてCa-HCO3型で地質の影響が大きいと考えられる地点が多く、流下に伴い濃度が上昇する傾向であったが、生月島や的山大島では海塩の影響が強くみられた。的山大島の一部の井戸では塩水化が発生している。雨水は3 月頃と10 月頃にEC が上昇しpH が低下する傾向があるが、水質形成では、硫酸イオン等の濃度は低く、越境汚染との関係については明確ではない。

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