日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
多臓器不全をきたした新生児に重炭酸バッファー腹膜透析を施行し救命し得た1症例
市場 稔久鷹取 誠多田 恵一
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2007 年 14 巻 1 号 p. 65-69

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抄録
我々は, 多臓器不全をきたした新生児に対し, 重炭酸をバッファーとして使用した腹膜透析 (peritoneal dialysis, PD) を行い救命できたので報告する。患者は日齢2日の女児。出生直後よりチアノーゼが出現。人工呼吸管理を行ったが酸素化は改善せず, 高度循環虚脱の状態であった。動脈血液ガスにて, BE-23.5mmol・l -1と著明なアシドーシスを認め, 多臓器不全に陥っており, 無尿に対しPDを開始した。PD開始後も高度の乳酸アシドーシスが継続, 循環動態も不安定であったため, PDのバッファーを乳酸から重炭酸に変更した。その後, BEは0.7mmol・l -1まで改善, それに伴い循環動態も安定し, PD開始後4日目には尿量が得られ, 6日目にはPDを, 12日目には呼吸器を離脱した。多臓器不全に伴う難治性アシドーシスに対し重炭酸バッファー腹膜透析液 (peritoneal dialysis fluid, PDF) を使用することにより, 乳酸アシドーシスだけでなく, 全身状態の改善に有効である可能性が示唆された。
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© 2007 日本集中治療医学会
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