抄録
急性期重症患者では高用量インスリン投与にもかかわらず高血糖が持続し, 栄養管理に支障を来たす場合が多い。このいわゆる「インスリン抵抗性」は, 急性期重症患者の重症度の指標となるとの指摘もある一方, 高血糖の制御が種々の合併症罹患率を低下させることが報告されてきた。特に, 2001年の外科系重症患者を対象とした大規模臨床試験では, インスリン投与強化による厳重な血糖管理が合併症の罹患率のみならず, その予後を有意に改善すると報告している。最近では, このインスリン強化療法による血糖管理の有用性が内科系重症患者にも適応できることが明らかとなり, インスリンによる血糖制御という基本的な治療手段が再び注目されている。本稿では, 急性期重症患者における血糖制御が全身性炎症反応や各重要臓器機能に及ぼす影響に焦点をしぼり, 集中治療における血糖制御の意義と重症患者の予後を改善する機序について考察した。