日本集中治療医学会雑誌
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14 巻, 2 号
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今号のハイライト
総説
  • 森〓 浩, 矢島 聡, 香取 信之
    2007 年 14 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    急性期重症患者では高用量インスリン投与にもかかわらず高血糖が持続し, 栄養管理に支障を来たす場合が多い。このいわゆる「インスリン抵抗性」は, 急性期重症患者の重症度の指標となるとの指摘もある一方, 高血糖の制御が種々の合併症罹患率を低下させることが報告されてきた。特に, 2001年の外科系重症患者を対象とした大規模臨床試験では, インスリン投与強化による厳重な血糖管理が合併症の罹患率のみならず, その予後を有意に改善すると報告している。最近では, このインスリン強化療法による血糖管理の有用性が内科系重症患者にも適応できることが明らかとなり, インスリンによる血糖制御という基本的な治療手段が再び注目されている。本稿では, 急性期重症患者における血糖制御が全身性炎症反応や各重要臓器機能に及ぼす影響に焦点をしぼり, 集中治療における血糖制御の意義と重症患者の予後を改善する機序について考察した。
  • ―その有効性と安全性―
    木倉 睦人, 板垣 大雅, 佐藤 重仁
    2007 年 14 巻 2 号 p. 151-164
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    ホスホジエステラーゼ (phosphodiesterase, PDE) III阻害薬 (ミルリノン, アムリノン, オルプリノン) は急性心不全の治療薬として注目されている。陽性変力作用と血管拡張作用を併せ持つ特殊性から, カテコラミンや血管拡張薬とは違った観点で投与の用量, 方法, 時期, 有効性や安全性に関する再検討がなされ, 筆者らは先行療法 (preemptive therapy) という新しい治療概念を提唱してきた。PDE III阻害薬の先行療法とは, 心臓血管外科手術においてβ受容体のdownregulation, 炎症反応, 再潅流傷害が生じる前から先行投与を開始し, 体外循環離脱後の循環動態の至適化 (hemodynamic optimization) と酸素需給バランスの適正化を図りながら, 低心拍出量や嫌気性代謝の亢進などのリスクを減らし, 患者の状態をより安全な先行領域 (preemptive zone) へと導く治療である。この治療概念は, 炎症反応や再潅流傷害が生じる大血管の遮断や臓器移植の分野にも応用できると考えられる。また, 安全性の確立のために今後も慎重に知見や検討を重ねていく必要がある。
原著
  • Kimihiko Kato, Hideo Hirose, Tatsuaki Matsubara, Takeshi Hibino, Kiyos ...
    2007 年 14 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    Electric countershock may cause injury to skeletal muscle with the elevations of cardiac troponin T (cTnT) and heart-type fatty acid-binding protein (h-FABP), and subsequently may affect the results of whole blood panel tests. A total of 27 patients with atrial flutter (n = 2) or atrial fibrillation (n = 25) were enrolled. Patients underwent electric countershock and blood sampling for cTnT and h-FABP at baseline and at various time points (immediately, 3, 6, and 24-hr after procedure). Whole blood panel tests for cTnT and h-FABP were also performed at the respective time points. Mean h-FABP was elevated 2.3 fold after electric countershock (P < 0.05), while there was no change in cTnT. The positive rates with the whole blood panel test was significantly higher for h-FABP than for cTnT at each time point (maximum diversity h-FABP: 55.6% v.s. cTnT: 0% at 3-hr after EC, P < 0.01). Electric countershock did not result in elevation of cTnT despite a rise in h-FABP. These data suggest that myocardial damage following electric countershock was minimal and that elevation of h-FABP may result from skeletal muscle damage. Thus, cTnT may be a more clinically useful for diagnostic indicator of myocardial damage. Furthermore, the whole blood panel test for cTnT has superiority to that for h-FABP following resuscitation, as levels are not affected by electric countershock.
  • 大谷 典生, 石松 伸一
    2007 年 14 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    目的 : 当院救急部での末期医療の現状を明らかにし, その問題点を探る。方法 : 2004年4月~2005年3月の期間に当院救命救急センターで死亡転帰をとった患者の診療録よりデータ収集を行った。結果 : 対象は61例。発病前より自身の治療方針に関する意思表示があったのは5例。回復困難の説明時, 34例の家族は積極的治療の継続を希望していた。全例, 担当医と家族との話し合いで治療方針を決定していたが, 最終的に47例で “do not attempt resuscitation (DNAR)” の決定があった。倫理カンファレンスの介入はなかった。DNAR決定後, 一部治療で差し控えもしくは中断が行われていた。結論 : 末期医療は事例ごとに, あり方が異なるが, (1) 本人の意思確認が不能の際の治療方針決定方法, (2) 回復困難の判定方法, (3) DNAR決定後に許容される治療内容の変更範囲に関するガイドラインの作成が必要である。
  • 奥谷 圭介, 速水 元, 大木 浩, 粉川 敦子, 永井 正一郎, 大塚 将秀, 山口 修, 磨田 裕
    2007 年 14 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    背景 : 補助手段を用いずに, 幽門後方への経腸栄養チューブ挿入をベッドサイドで簡便に行える方法を検討した。対象 : 2003年4月1日~2005年5月31日の間に横浜市立大学附属病院ICU, または同附属市民総合医療センターGICUに入室し, 幽門後方栄養が必要な患者。方法 : アーガイル™のニューエンテラルフィーディングチューブを使用した。3cm進めるごとに手を離し, 跳ね返りがあれば引き抜き, なければさらに進めた。その挿入抵抗と, 空気注入音が変化すれば手技を終了し, X線写真で確認した。結果 : 64人に71回の挿入を行い, 幽門後方への留置に成功したのは56回 (78.9%)。所要時間は成功例21.6 ± 4.8分, 失敗例51.3 ± 33分であったが, 有意差はなかった (P = 0.050)。重大な合併症はなかった。結語 : この方法は, 成功率と所要時間において, 実用的である。
  • ―科学的根拠に基づいた対策の実践と予防的抗菌薬の適正使用―
    宮原 健, 松浦 昭雄, 吉田 勝彦, 水谷 真一, 江田 匡仁, 河村 朱美, 笠松 雅之
    2007 年 14 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    [目的] 手術部位感染 (surgical site infection, SSI) 予防のため, 米国疾病管理センターのガイドラインを中心に科学的根拠に基づいた対策を行った。[方法] 1999年1月~2004年9月の心臓血管手術症例284例を対象とした。A群 (1999年1月~8月 : 36例, 予防的抗菌薬投与8日) を対照とし, ガイドラインの遵守を開始したB群 (1999年9月~2000年11月 : 64例, 抗菌薬投与4日), C群 (2000年12月~2002年3月 : 59例, 抗菌薬投与24時間), さらに抗菌薬投与期間を手術当日のみとした125例をD群 (2002年4月~2004年9月) として比較した。[結果] SSI発症率はA群8.3% (切開部表層感染2.8%, 縦隔炎5.6%), B群1.6% (0%, 1.6%), C群0% (0%, 0%), D群0.8% (0%, 0.8%) となり, D群においてA群に比し, 有意に減少した (P = 0.035)。 [結論] 心臓血管外科手術においては, SSI予防的抗菌薬は手術当日投与のみで十分である。
症例報告
  • Koichiro Shinozaki, Kenichi Matsuda, Shigeto Oda, Hidetoshi Shiga, Mas ...
    2007 年 14 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    We report a patient with severe obesity who suffered cardiopulmonary arrest (CPA) after drastic weight loss but successfully survived with cardiopulmonary resuscitation and critical care in the ICU. We describe the patient's care and discuss the relationship between drastic weight loss and secondary prolongation of corrected QT interval (long QT syndrome) with development of torsades de pointes (Tdp). The corrected QT interval (QTc) observed upon the first visit of the patient to the outpatient unit was 0.475 sec, with a body mass index (BMI) of 67.5. QTc was prolonged to 0.507 sec after drastic weight reduction to achieve a BMI of 60.8. That was further prolonged to 0.608 sec upon ICU admission following resuscitation. Postresuscitation treatment in the ICU was successful, and she was discharged from the ICU on the 7th day. Strict medical weight control after discharge from the ICU successfully shortened QTc within the normal range. The relationship between BMI and QTc observed in the present case suggests that severe obesity and excessive weight loss caused prolongation of QTc and CPA. These findings contribute to elucidation of the pathology of sudden death in the severe obese population.
  • 斎藤 敬太, 升田 好樹, 今泉 均, 名和 由布子, 岩山 祐司, 黒田 浩光, 今井 富裕, 浅井 康文
    2007 年 14 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    病勢の把握が困難な人工呼吸管理中の重症Guillain-Barré症候群において, 経時的な末梢神経伝導速度測定を用いた病勢評価を元に, 人工呼吸管理からの離脱を試みた症例を経験した。症例は54歳, 男性。感冒様症状出現後10日目頃に腹部膨満感のため近医を受診し入院, 翌日より四肢のしびれ, 筋力低下, 呼吸困難が出現したため当院ICUに転院し, 人工呼吸管理となった。髄液検査では蛋白細胞解離が認められ, 第1ICU病日の末梢神経伝導速度測定では, 遠位潜時の延長を伴う振幅の低下と多相性伝導が認められ, 脱髄型Guillain-Barré症候群と診断した。第4ICU病日には伝導速度が測定不能となるほど進行した。合計7回の血漿交換および血漿吸着療法, 大量ステロイド投与の併用により, 第8ICU病日には潜時の短縮および振幅の増大が認められたため, 人工呼吸管理からの離脱を開始し, 第11ICU病日には気管チューブを抜管した。人工呼吸を必要とする重症Guillain-Barré症候群に対する治療効果の判定や臨床経過の客観的評価法として, 経時的な末梢神経伝導速度測定は有用な補助手段の一つとなる可能性が示唆された。
  • 山中 寛男, 橘 一也, 松浪 薫, 小野 理恵, 木内 恵子
    2007 年 14 巻 2 号 p. 207-209
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    気管切開チューブ留置中に腕頭動脈気管瘻を合併し, 大量の気道出血をきたしたが, 適切な緊急処置により救命しえた症例を経験した。症例は15歳, 男児。新生児仮死により低酸素性虚血性脳症となり, その後徐々に呼吸状態が悪化してきたので15歳で気管切開, 喉頭気管離断術を施行した。2ヶ月後, 吸引時に気管切開チューブより大量の動脈性出血を認めた。心肺蘇生を行いつつ, 腕頭動脈気管瘻を疑い, 直ちに気管切開チューブを抜去し, 通常の気管挿管チューブを気管切開孔に挿入した。カフを膨らませ, その位置を調節することにより一時的に止血できた。輸血などにより循環を安定させたのち, 緊急腕頭動脈離断術を行った。その後, 経過は良好で術後6日目にICUを退室した。出血の原因は, 気管切開チューブの過度の運動, 過大なカフ圧, 低位のカフ位置などが考えられたが, 他に高度側彎による気管と動脈の解剖学的位置異常も原因の一つと考えられた。このような症例では, 計画的な腕頭動脈離断術を検討する必要がある。
  • 田中 亮, 鶴田 良介, 金子 唯, 金田 浩太郎, 小田 泰崇, 井上 健, 笠岡 俊志, 前川 剛志
    2007 年 14 巻 2 号 p. 211-216
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    患者は61歳, 女性である。臀部痛と腰痛を主訴に近医を受診し, 膠原病の疑いにてステロイド治療, 抗菌薬 (sulbactam/cefoperazone, SBT/CPZ) の投与が行われたが改善せず, 全身状態がさらに悪化したため, 精査・加療目的で当センターに転院搬送された。血液検査とCT画像所見から, 化膿性脊椎炎・椎間板炎, 腸腰筋膿瘍による感染症と診断した。細菌検査により黄色ブドウ球菌が同定されたため, 感受性のある適切な抗菌薬の使用, 免疫グロブリン製剤の投与, さらには膿瘍ドレナージなどを実施したが, 病態は改善しなかった。このため第22病日から高気圧酸素 (hyperbaric oxygen, HBO) 治療を併用した。HBO治療には以前から言われていた効果に加えて, 好気性菌に対する様々な効果が報告されている。本症例でも, HBO治療後に臨床症状や画像所見の改善が認められたことから, こうした効果が感染症の病態改善に寄与した可能性が高い。HBO治療は従来の疾患のみならず, その適応を拡大していくべき治療法であると考えられた。
  • 藤田 啓起, モディ 眞由美, 伊東 風童, 小西 由佳利
    2007 年 14 巻 2 号 p. 217-220
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    肺炎球菌感染に伴うacute respiratory distress syndrome (ARDS) の人工呼吸管理中に施行した用手的呼吸理学療法によって気腫状変化の急激な増悪を認め, 不幸な転帰をとった症例を経験した。症例は48歳, 男性。胸部X線およびCTにて両肺野に散在する浸潤影を認め, 緊急気管挿管後のP/F比は54であった。動脈血酸素化改善のため, 人工呼吸管理に加え腹臥位を含めた体位呼吸療法を施行したが動脈血酸素化維持が困難であったため, 第2病日より用手的呼吸介助法による呼吸理学療法を施行した。これにより一過性にP/F比改善を得たが, 第6病日に気腫状変化の急激な増悪を認め, ventilator induced lung injury (VILI) が示唆された。用手的呼吸介助法中止後も気腫状変化が増悪し, 呼吸不全に伴う全身状態悪化のため第9病日に永眠された。ARDS急性期人工呼吸管理中の用手的呼吸理学療法は, 低容量換気による肺保護戦略の概念に反している可能性があり, その適応や施行手技は慎重に判断すべきと考えられ, 今後の検討が必要である。
  • 田中 顕太郎, 橋本 学, 高地 明
    2007 年 14 巻 2 号 p. 221-225
    発行日: 2007/04/01
    公開日: 2008/10/24
    ジャーナル フリー
    右肺全摘術後早期に発症した広範にわたる上大静脈血栓症を経験した。症例は65歳男性。肺癌の診断で右肺全摘術を行った。術後1日目に左上半身のチアノーゼ・頚静脈の怒張・血圧低下・呼吸困難をきたし, ショックとなった。胸部造影CTを行い, 上大静脈から左腕頭静脈にかけての広範な血栓形成による上大静脈症候群と診断した。緊急に血栓除去術を行い全身状態の改善が得られたが, その後再び上半身のチアノーゼと呼吸困難を認めた。血栓再形成が疑われたため血栓溶解療法を行ったところ, 症状は著明に改善し画像上も血栓の消失が確認された。本症例での血栓形成の原因として, 奇静脈を合併切除し同部の血管縫合を行ったという術式の問題, 術中補液量の過少などが考えられた。特別なリスクファクターを認めず, 術後早期にこのような広範な血栓形成をきたし上大静脈症候群を発症することは比較的稀であると考えられたため, 報告した。
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