日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
急性肺血栓塞栓症を合併した汎下垂体機能低下症の1例
吉田 徹竹端 均神應 知道佐藤 千恵上條 吉人今井 寛北原 孝雄相馬 一亥
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2008 年 15 巻 3 号 p. 313-317

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抄録
汎下垂体機能低下症を背景として発症した急性肺血栓塞栓症症例を経験した。症例は30歳男性。14歳時に頭蓋咽頭腫の摘出手術を受け,以後,汎下垂体機能低下症・中枢性尿崩症・2次性糖尿病となり,ホルモン補充療法・インスリン療法を継続していたが,高浸透圧性昏睡などで入院を繰り返していた。約15時間前から呼吸困難・胸痛を自覚し受診した。受診時収縮期血圧は86mmHg(触診),心拍数は130 min−1であった。心臓超音波検査で肺高血圧の所見を認め,造影CT検査では左右肺動脈に血栓像を認めた。抗凝固療法を開始し,recombinant tissue plasminogen activatorによる血栓溶解療法を施行した。肺動脈収縮期圧は約65 mmHgから45~50 mmHgへの低下に留まり,慢性肺血栓塞栓症の存在も否定できなかった。心拍数は70~80 min−1へ低下し,自覚症状も消失した。抗凝固療法を継続し,一般病棟へ移動となった。ホルモン補充療法下では体内水分量や浸透圧の変動をきたしやすい。そのため通常より血栓形成傾向に陥りやすく,深部静脈血栓・急性肺血栓塞栓症に注意が必要である。
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© 2008 日本集中治療医学会
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