日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
O-157感染症による溶血性尿毒症症候群によりposterior reversible encephalopathy syndromeを発症した1症例
藤井 洋泉石井 瑞恵川西 進渡辺 陽子奥 格實金 健福島 臣啓時岡 宏明
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2008 年 15 巻 4 号 p. 555-559

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抄録
Posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)は,頭痛,痙攣,意識障害,視覚異常などの神経症状と,画像上,後頭葉白質を中心とした病変を特徴とする症候群である。今回,本邦初である溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome, HUS)によりPRESを発症した1症例を経験した。症例は83歳の女性で,腹痛,下血にて入院した。第3病日に意識状態が悪化し,痙攣も出現した。腸管出血性大腸菌O-157が検出され,ベロ毒素は陽性であった。頭部CTおよびMRIで異常がなく,O-157感染症とHUSによる脳症と考えた。しかし,第6病日のCTにて右後頭葉と両側外包に低吸収域がみられ,PRESを疑った。次第に意識状態は改善し,第19病日のCTでは低吸収域は不明瞭化し,第27病日のCTでは低吸収域は消失したため,PRESと診断した。HUSの血管内皮細胞障害により,PRESを発症したと思われる。HUSによる意識障害では,PRESを念頭においたCT,MRIでの経時的な観察が必要である。
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© 2008 日本集中治療医学会
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