日本集中治療医学会雑誌
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15 巻, 4 号
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今号のハイライト
総説
  • —法律家の視点から—
    中村 勝己
    2008 年 15 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    1999年に都立広尾病院の点滴への消毒液混入事件,横浜市立大学附属病院の患者取り違え事件が起こって以降,現在に至るまで,医療裁判にとってこの10年は激動の10年であった。そして,医療の崩壊が顕在化してきた10年でもあった。この10年を医療裁判という観点から振り返る。そして,医療の不確実性の理解が,今後10年間の医師・患者関係のキーワードになっていくように思われる。
解説
  • 佐藤 直樹, 田中 啓治, 神畠 宏, 公文 啓二, 上嶋 健治, 坪井 英之, 中尾 浩一, 林田 憲明, 三嶋 正芳, 宮崎 俊一, 吉 ...
    2008 年 15 巻 4 号 p. 503-507
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    日本における急性心筋梗塞患者に対する治療は,冠インターベンション,バイパス術ともに世界でもトップレベルにあることは疑う余地がない。しかし,疫学データに関する点では,明らかに世界に遅れをとっている。2008年に日本循環器学会からST上昇型急性心筋梗塞のガイドラインが公表される予定であるが,今後,ガイドラインをより充実させるために,日本における急性心筋梗塞に関する全国データネットワークの構築を今から検討しておくことは非常に重要である。そして,疫学データが集積されれば,ガイドラインへの反映も含めてさらに日本の急性心筋梗塞治療に大きく貢献するはずである。このようなデータネットワークを構築する意義と方法について,日本集中治療医学会CCU委員会によるアンケート調査を参考に解説する。
原著
  • 森川 記道, 冨田 隆志, 畝井 浩子, 武田 卓, 三宅 勝志, 山野上 敬夫, 谷川 攻一, 木平 健治
    2008 年 15 巻 4 号 p. 509-514
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】集中治療領域におけるテイコプラニン(teicoplanin, TEIC)の適切な用法用量の検討。【方法】広島大学病院集中治療病棟においてTEIC投与を受けた非透析症例50例を対象に,患者背景,TEIC血清中トラフ濃度,臨床検査値を調査解析した。【結果】投与開始48時間後の血清中トラフ濃度が得られた症例では,従来の推奨投与法での目標とした10あるいは15μg·ml−1の到達率はそれぞれ40%および15%であった。血清中濃度推移のシミュレーションにより,初日投与量を600 mgあるいは12 mg·kg−1の2回投与に増量すると,投与開始24時間後の濃度がそれぞれ14.5±5.8,15.8±5.1μg·ml−1となり,速やかな治療濃度到達が期待できると推定された。また,腎機能障害患者5例でも,投与初期の血清中濃度推移は腎機能正常患者と大きな違いは認められなかった。【結論】集中治療領域でTEICを用いる場合,速やかな治療濃度到達のため,初期段階では腎障害の有無に関わらず高用量を用いることが必要と考えられる。
  • 遠藤 裕, 本多 忠幸, 大橋 さとみ, 肥田 誠治, 木下 秀則, 佐藤 暢夫, 斉藤 直樹
    2008 年 15 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    【目的】近似エントロピー(approximate entropy, ApEn)は時系列データの複雑性の指標である。最近,敗血症由来の多臓器機能不全(multiple organ dysfunction syndrome, MODS)患者で,体温曲線のApEnがsequential organ failure assessment(SOFA)スコアと逆相関を示し,予後の指標になると報告された。当院のデータを用いて遡及的に検証した。【方法】過去18ヶ月間に,MODSの診断でICUに入室し,膀胱温を4日以上測定した15歳以上の患者30例を対象とした。ApEnとSOFAスコアの相関性,ApEnがICU転帰を予測出来るか検討した。ApEnは朝9時に先行する33時間分(68個)の膀胱温のデータから算出,同時にSOFAスコアを決定した。【結果】30例中5例が死亡した。30例中29例でApEnとSOFAスコアに逆相関を認めた。転帰に関して,ApEnの平均値,最大SOFAスコア,最大乳酸値が有意な変数であったが,ロジスティック多変量解析では最大SOFAスコアのみが有意となった。【結論】体温曲線のApEnは敗血症由来MODS患者の予後を反映しない。
症例報告
  • 長門 優, 岩本 謙荘, 原山 信也, 岩田 輝男, 二瓶 俊一, 谷川 隆久, 相原 啓二, 蒲地 正幸
    2008 年 15 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    尿管結石症から敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群となり救命できなかった一例を経験した。症例は85歳女性。尿路感染症を疑われ近医に入院したが,翌日にショックとなり当院に紹介された。当院搬送時すでに多臓器機能不全の状態であった。血中エンドトキシン値の上昇と,CTにて左尿管結石,左水腎症を認め,結石嵌頓による敗血症と診断した。呼吸循環管理に加え,経尿道尿管カテーテル留置,エンドトキシン吸着および持続血液濾過透析を行ったが,ICU入室2日目に死亡した。血液・尿培養のいずれからもEscherichia coliE. coli)が検出された。当院で過去5年間に経験した尿管結石症から敗血症へ移行した10症例のうち,死亡例は本症例のみであった。原因として,高齢であったこと,全身性炎症反応症候群が遷延し重症化したことに加え,抗生物質によりグラム陰性菌からエンドトキシン遊離が助長された可能性が考えられた。
  • 大藤 純, 乾 大資, 山口 治隆, 福田 靖, 今中 秀光, 西村 匡司
    2008 年 15 巻 4 号 p. 527-531
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation, NPPV)を用い人工呼吸器からの離脱に成功した乳児2症例を経験したので報告する。【症例1】11ヶ月女児。先天性僧帽弁逆流症に対し,33日間の人工呼吸管理後に抜管したが,頻呼吸,気道分泌物の増加を認めた。Continuous positive airway pressure(CPAP)4 cmH2O, FIO2 0.3の設定でNPPVを開始したところ,臨床症状の改善を認めた。NPPVを28日間使用し離脱した。【症例2】10ヶ月女児。両大血管右室起始,肺動脈閉鎖,主要体肺側副血行路で肺内肺動脈統合術,Blalock-Taussigシャント術を受けた。上気道感染から呼吸状態が増悪し,24日間の人工呼吸管理後に抜管したが,抜管直後から呼気の延長,喘鳴が出現した。CPAP 5 cmH2O, FIO2 0.4でNPPVを開始したが,再挿管となった。人工呼吸開始後37日目に再度抜管した。Spontaneous/timed(S/T)mode,expiratory positive airway pressure/inspiratory positive airway pressure(EPAP/IPAP)4/6 cmH2O, FIO2 0.4でNPPVを開始し,4日間使用後離脱した。NPPVは,乳児での人工呼吸器からの離脱の補助として有効であった。
  • 佐藤 幸子, 池田 智子, 有森 豊, 小野 剛, 佐伯 晋成
    2008 年 15 巻 4 号 p. 533-538
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    症例は67歳男性,クレブシエラ肺炎,肝膿瘍,脳膿瘍,眼内炎の診断で集中治療を受けていた。心内膜炎は認めなかった。クレブシエラ感染症は治癒傾向を示し,人工呼吸器からも離脱したが,喀痰よりAspergillus fumigatusを分離した。ミカファンギンを投与したが,呼吸状態は徐々に悪化し,人工呼吸再開となった。血清アスペルギルス抗原が陽性であり,侵襲性肺アスペルギルス症と診断,アムホテリシンB,続いてボリコナゾールを投与した。肺病変は軽快したが,僧帽弁に疣贅と閉鎖不全を認め塞栓を疑う症状が出現したため,疣贅の摘出と僧帽弁形成術を行った。術後の経過は良好で,ボリコナゾールの内服を継続し,一般病棟へ退室となった。
  • 谷口 彩乃, 梅内 貴子, 志馬 伸朗, 加藤 祐子, 橋本 悟
    2008 年 15 巻 4 号 p. 539-542
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    食道閉鎖症,大動脈縮窄症に高度な先天性気管狭窄症を合併した新生児の1症例を経験した。狭窄範囲が分岐部に達し,かつ最狭部外径が2.0 mmと最重症型の気管狭窄症であった。気管食道瘻盲端間が長く,盲端側への気管チューブ迷入による換気不全を頻回に生じ,呼吸管理に難渋した。また,長期挿管管理による肉芽形成,誤嚥などによる無気肺を繰り返すことも呼吸管理をさらに難しいものとした。気管支ファイバースコープを積極的に用いることで,換気不全の原因,チューブ位置調整,肉芽の状況などの早期の診断・対処が可能であった。致死的な合併症はなく,最狭気管外径を3.5 mmまで成長させることができ,気管形成術に到達したが,現在も人工呼吸器離脱は困難であり,今後も慎重な呼吸管理が必要な状況である。
  • 江尻 晴美
    2008 年 15 巻 4 号 p. 543-547
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    せん妄は,身体的原因により短期間に発現して時間とともに変動する,注意力や意識レベルの障害と睡眠覚醒障害を伴った認知機能の変化である。今回,ICU滞在中にせん妄を発症した患者において,その後,せん妄に対する患者の思いを直接聞くことができたので報告する。症例は,60歳代前半の男性。修正大血管転位症のため左側房室弁置換術,心房細動根治術を受け,術後2日目よりせん妄を発症した。悲観的,抵抗・拒絶,見当識障害が認められたが,家族が介入すると現実認知が可能であった。術後8日目,「大変見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」と涙を流した。このときの患者の言動から,見当識障害,会話の障害など,せん妄患者によく認められる現象が患者にとって苦痛で辛いものであることがわかった。看護スタッフはその気持ちを理解して援助する必要性が示唆された。
  • 高田 真二, 黒木 佳奈子, 高橋 葉子, 冨田 篤臣, 長岡 武彦, 井野 研太郎, 森田 茂穂
    2008 年 15 巻 4 号 p. 549-553
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    患者は70歳,男性。経尿道的膀胱腫瘍切除術を全身麻酔下に施行した。手術107日前に心筋梗塞を発症し,右冠動脈#4房室結節枝にステントを留置していたが,本手術前の心機能は正常と評価されていた。45分間の全身麻酔中,動脈血の酸素化は不良であった。抜管後呼吸困難が出現したため,直ちに再挿管し,人工呼吸を再開した。胸部X線写真で肺水腫を,心エコーで全周性の壁運動低下を認めたため,急性心不全と診断してCCUに入室となった。術後はカテコラミン,冠拡張薬,硝酸薬で循環動態を維持し,術後8日目に抜管,術後24日目にCCUを退出した。術前状態を再検討したところ,術前3週間以内に新たな心筋虚血が生じて心不全が進行していた可能性が,この期間に測定された血漿脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド濃度の増加から,疑われた。心不全が悪化しつつある患者では,短時間の全身麻酔でも非代償性の心不全に陥る危険性があり,詳細な術前評価と慎重な麻酔管理が不可欠である。
  • 藤井 洋泉, 石井 瑞恵, 川西 進, 渡辺 陽子, 奥 格, 實金 健, 福島 臣啓, 時岡 宏明
    2008 年 15 巻 4 号 p. 555-559
    発行日: 2008/10/01
    公開日: 2009/04/20
    ジャーナル フリー
    Posterior reversible encephalopathy syndrome(PRES)は,頭痛,痙攣,意識障害,視覚異常などの神経症状と,画像上,後頭葉白質を中心とした病変を特徴とする症候群である。今回,本邦初である溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome, HUS)によりPRESを発症した1症例を経験した。症例は83歳の女性で,腹痛,下血にて入院した。第3病日に意識状態が悪化し,痙攣も出現した。腸管出血性大腸菌O-157が検出され,ベロ毒素は陽性であった。頭部CTおよびMRIで異常がなく,O-157感染症とHUSによる脳症と考えた。しかし,第6病日のCTにて右後頭葉と両側外包に低吸収域がみられ,PRESを疑った。次第に意識状態は改善し,第19病日のCTでは低吸収域は不明瞭化し,第27病日のCTでは低吸収域は消失したため,PRESと診断した。HUSの血管内皮細胞障害により,PRESを発症したと思われる。HUSによる意識障害では,PRESを念頭においたCT,MRIでの経時的な観察が必要である。
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