日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
塩酸タンクに転落し高度乳酸アシドーシスおよびP50異常高値を呈した1症例
矢野 隆郎山内 弘一郎丸田 豊明丸田 望窪田 悦二竹智 義臣恒吉 勇男
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2011 年 18 巻 3 号 p. 375-380

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抄録

【症例】34歳,男性。【病歴と経過】化学工場で深さ2 mの35%塩酸タンクに転落し,約10分間全身が塩酸に浸り,転落から10分後(転落の目撃者なく最長予測時間)に発見され,約18分後に当院に搬送された。来院時,意識清明で発語も認めたが,顔面・頭部を含む全身熱傷のため気管挿管した。動脈血液ガス検査で,pH 6.76,PaCO2 26.3 mmHg,PaO2 268 mmHg,BE -27.8 mmol/l,乳酸値124 mg/dl,P50 98 mmHgと高度な代謝性アシドーシス,高乳酸血症,P50の上昇を認めた。重炭酸ナトリウム250 mlを投与したところ,PaO2 492 mmHg,P50 34 mmHgと一時的な改善を認めたが,多臓器不全が進行し2日目に死亡した。【結語】塩酸が皮膚から大量に吸収され,高度な代謝性アシドーシスとP50の上昇を合併した症例を経験した。症状の進行が急速かつ重篤であり,救命には至らなかった。文献上同様な報告は見当たらなかった。

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© 2011 日本集中治療医学会
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