日本集中治療医学会雑誌
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総説
広範型急性肺塞栓症の治療
山本 剛宗像 亮田中 啓治
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2011 年 18 巻 4 号 p. 567-574

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抄録
広範型の急性肺塞栓症では,急性の右心不全からショックに陥る。適切な治療が行われない限り,多くは数時間以内に死亡する。したがって,救命のためには迅速で的確な診断,治療が重要になる。循環虚脱例には経皮的心肺補助装置を導入する。広範型急性肺塞栓症への標準治療は血栓溶解療法である。肺動脈内血栓の溶解により肺動脈血管抵抗が減少し,血行動態や右室機能の早期改善がもたらされる。一方,出血リスクが高い症例には,カテーテル治療あるいは外科的血栓摘除術を行う。カテーテル治療では血栓塞栓の範囲,量に合わせて手技の選択や血栓溶解薬量の調節が可能であり,速やかに肺血流の改善や肺動脈圧の低下がみられる。ICUでは重症度の高い循環虚脱例や血栓溶解薬の禁忌例が少なくないため,呼吸循環管理,診断,治療を実施するにあたり,集中治療医だけでなく,循環器内科医,放射線科医,心臓血管外科医,臨床工学技士などにより集学的にアプローチすることが重要である。
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© 2011 日本集中治療医学会
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