谷本学校 毒性質問箱
Online ISSN : 2436-5114
遺伝毒性
医薬品開発の視点からの遺伝毒性(Q&A)
森田 健濱田 修一宮内 慎川村 祐司甲田 章宅見 あすか有江 裕子近藤 千真西山 義広米澤 豊土居 正文
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2018 年 2018 巻 20 号 p. 52-60

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抄録
 遺伝毒性は医薬品開発において重要な評価項目であり、安全性評価研究会でも継続的に議論をしてきた1)。2017年11月に開催された日本環境変異原学会第46回大会(濱田修一大会会長、東京)において、日本環境変異原学会と安全性評価研究会の共催シンポジウムが企画され、遺伝毒性試験に関する課題について活発な議論を行った。本稿では、共催シンポジウムで議論された内容を中心にQ&A形式で紹介する。
 2012年に発出された「医薬品の遺伝毒性試験及び解釈に関するガイダンス」(ICH S2(R1))2)では、標準的な遺伝毒性試験の組み合わせの選択肢として、哺乳類細胞を用いた遺伝毒性試験を実施する代わりに、2種類の異なる臓器におけるin vivo試験を選択できることならびに条件が合えば反復投与毒性試験に遺伝毒性評価を組み込めることになり、in vivo試験系による評価の重要性がより高まってきている。また、哺乳類培養細胞を用いた遺伝毒性試験では、in vitro小核試験が選択肢の一つとして新たに加えられ、これまで評価困難であった染色体数的異常、特に異数性が検出されるケースが増えてきた。近年、反復投与毒性試験において遺伝毒性を評価した事例が増えており、さらに小核試験とコメット試験を同時評価する事例も散見されている。これまで遺伝毒性試験はハザード評価が主目的であったが、反復投与毒性試験と同一または類似した投与量及び投与期間で実施することで、リスク評価としての役割が期待されている。しかし、リスク評価を適切に行うには課題も多いことから、今回はin vivo試験法の選択や用量設定に関する質問を取り上げた。また、in vitro小核試験の実施数が増えたことにより、in vitro染色体異常試験では検出困難であった染色体の数的異常(異数性)を起こす化合物が検出されやすくなったことから3)、その評価方法やヒトでのリスク予測についても取り上げた。Q&Aは以下の4つのトピックスから選択した。本Q&Aが遺伝毒性試験に関する皆さんの理解の一助となれば幸いである。
1. 第2のin vivo試験の選択方法
2. In vivo試験の用量設定及び評価方法
3. 染色体数的異常の評価方法
4. 遺伝毒性と生殖発生毒性の関連性について
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© 2018 安全性評価研究会
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