日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
総説
輸血によるgraft-versus-host disease(GVHD)予防のための血液に対する放射線照射
藤井 康彦稲葉 頌一稲田 英一
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 19 巻 1 号 p. 27-32

詳細
抄録

輸血後移植片対宿主病(graft-versus-host disease, GVHD)は免疫不全の患者にのみ発症すると考えられていたが,原病に免疫不全のない患者でも,human leukocyte antigen(HLA)一方向適合を主要な条件として発症することが明らかになった。日本人はHLAの多様性が少ないため,輸血後GVHD発症のリスクが高い。日本輸血・細胞治療学会は1992年に初めて「輸血によるGVHD予防のための血液に対する放射線照射ガイドライン」を公表し,2010年に4度目の改訂を行った。2000年以降,放射線照射血液製剤による輸血後GVHDの確定症例は確認されなくなった。しかし,2007年と2010年に日本輸血・細胞治療学会が実施した「輸血業務に関する総合アンケート調査」では,放射線未照射製剤を使用した施設が少なからず存在した。放射線照射ガイドラインによる予防対策は効を奏しているが,輸血後GVHDの重篤性や予防の必要性に対する認識が薄れる懸念があり,認識不足による予防の不徹底からの輸血後GVHDの発症は回避されるべきである。

著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top