日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
末梢静脈カテーテルからのAcinetobacter血流感染により敗血症性ショックに至った一例
南 仁哲祖父江 和哉間渕 則文藤田 義人
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2012 年 19 巻 1 号 p. 51-54

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抄録
近年,医療関連感染の原因菌として注目されているAcinetobacter属は,易感染患者への日和見感染が多い。今回我々は,末梢静脈カテーテルからのAcinetobacter血流感染で集中治療を要した症例を経験したので報告する。患者は69歳男性で,上部消化管出血のため入院した。入院時に確保した末梢静脈カテーテル留置部に発赤を認め,抜去したものの全身状態が悪化し,ICU入室管理となった。入室時は敗血症性ショック,播種性血管内凝固,急性腎不全を来しており,血液培養からAcinetobacter baumanniiが検出された。集学的治療により全身状態は改善し,第36病日に独歩退院した。Acinetobacter属は抗菌薬に多剤耐性を獲得している場合があり,このような耐性菌がICUを中心としてアウトブレイクする報告が相次いでいる。末梢静脈カテーテルからの血流感染は報告が稀であるが,本症例のように易感染状態ではない患者に血流感染を起こす場合もあることから,日常的な感染予防策や,耐性を獲得させないための抗菌薬の適正使用が重要である。
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