日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
外傷後のヘパリン誘発性血小板減少症経過中に発生した化膿性血栓性静脈炎の一例
光岡 明人吉岡 早戸前川 隆明岡田 一郎霧生 信明井上 潤一小井土 雄一
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2012 年 19 巻 4 号 p. 628-632

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抄録
症例は67歳,男性。交通外傷にて救急搬送され,腹腔内出血の診断にて緊急手術を施行した。術後9日目に呼吸状態の悪化を認め,両側の肺動脈塞栓,および腎静脈上から腎静脈下に至る下大静脈血栓を併発した。既往の心房細動の血栓予防として未分画ヘパリンを使用しており,ヘパリンと血小板第4因子複合体抗体が陽性であったため,ヘパリン誘発性血小板減少症により血栓が形成されたと判断した。また,敗血症を併発し,血液培養にてmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が検出された。画像診断にて明らかな感染源が指摘できず,血栓が母地となり化膿性血栓性静脈炎(suppurative thrombophlebitis)を併発し,感染経路として中心静脈カテーテルが関与した可能性が高いと考えた。ヘパリン投与により血栓症が生じ,化膿性血栓性静脈炎が生じることを念頭に置く必要があると考えられた。
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© 2012 日本集中治療医学会
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