2012 年 19 巻 4 号 p. 671-675
症例は63歳の男性で,既往に慢性骨髄単球性白血病と慢性腎不全(血液透析中)があった。鼠径ヘルニア手術を行い,周術期に貧血のため赤血球濃厚液(red cell concentrates, RCC)を輸血した。術前の不規則抗体は陰性であったが,術後7日目に抗E抗体が陽性となり,輸血したRCCはE抗原陽性であった。溶血所見はなかったが,遅発性溶血性輸血副作用が発症した際には致命的となり得るため,E抗原陽性赤血球の除去目的で赤血球交換を行った。持続緩徐式血液浄化装置と血漿分離器を用いて,血液を血漿と血球に分離後,血漿を返血し,血球は廃棄してE抗原陰性のRCCを輸血した。赤血球交換施行後にはE抗原陽性赤血球は減少し,その後も輸血副作用を来すことなく経過した。本症例のように慢性腎不全を合併し,抗原陽性の残存赤血球が多い場合には,溶血所見はなくても赤血球交換を含めた早期の対応を考慮することが望ましい。