日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
総説
Vascular Labの現状とその意義
杉本 郁夫太田 敬石橋 宏之岩田 博英山田 哲也只腰 雅夫肥田 典之折本 有貴佐藤 淑子岡田 敦子
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2011 年 20 巻 5 号 p. 761-766

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抄録
血管疾患の機能診断をはじめとした無侵襲検査を確実に行うためにはVascular Laboratory(Vascular Lab)の設置と血管診療技師(clinical vascular technologist; CVT)の配置が重要なポイントとなる.当院では1999年に血管外科内にVascular Labを開設し,機能検査結果の集積からいくつかの知見を得ることができた.間歇性跛行肢に対するトレッドミル歩行試験では歩行能力評価とともに,運動療法の効果が予測できることがわかった.重症下肢虚血肢に対する無侵襲検査(足関節血圧,第1趾血圧,皮膚灌流圧,経皮酸素分圧)では,虚血性潰瘍や切断端の治癒可能性の評価に有用であり,とくに皮膚灌流圧が40 mmHg未満,第1趾血圧が30 mmHg未満の時,創治癒の可能性は低いことがわかった.本邦におけるVascular Labの内容は施設によってさまざまであるが,どこに所属しているかによってその方向性が決まるといっても過言ではない.Vascular Labの多くは臨床検査部に所属し,生理機能検査部門の一部がVascular Labを担っている.そのため血管外科に特化した機能検査を中心としたVascular Labは少なく,超音波検査を主体としたVascular Labが多い.Vascular Labの専門性,高い技術を持った検査技師の育成,さらにコストなど問題があるが,よりよい脈管医療の提供のためには多くの施設にVascular Labが設置されることが望まれる.
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