抄録
症例は70歳の男性,胃潰瘍の診断で当院に入院となった。保存的に治療を行ったところ,胃潰瘍の改善を認めたため,経腸栄養を開始した。同日の夜間より発熱,粘血便混じりの下痢が出現し,尿量の低下が認められた。翌日の腹部単純CT画像上で門脈ガスを認めたものの,腹部所見に乏しく,保存的に経過観察とした。6時間後に腹部造影CTを再度施行したが,画像上明らかな腸管虚血や壊死は否定的であり,門脈ガスも消失していた。しかし,急激な全身状態の悪化や外科的処置の必要性も懸念されたことから,ICU入室とし,保存的治療を継続した。その後,全身状態は改善し,第4 ICU病日に一般病棟に転棟となった。後日,ICU入室時の血液培養からAcinetobacter baumanniiが検出されたものの,腸管以外に明らかな感染巣を認めないことから,bacterial translocationに合併した門脈ガス血症の診断に至った。