抄録
再膨張性肺水腫(reexpansion pulmonary edema, RPE)による重度の低酸素血症が,一酸化窒素(nitric oxide, NO)吸入により改善された症例を経験したので報告する。患者は19歳,男性。自然血気胸に対する胸腔鏡手術後にRPEを発症した。P/F比79.8の低酸素血症を呈し,PEEPを加えた陽圧換気では酸素化を改善しえなかったため,第2病日からNO吸入を開始した。約30分後にP/F比が128となり,投与酸素濃度を軽減しえた。第5病日までNO吸入を継続したが,有害事象なく良好な経過を辿った。NOが換気の行われている肺胞の肺血管のみを選択的に拡張させ,換気血流比を改善させたと考えられた。RPEに伴う重度の低酸素血症に対する治療として,NO吸入は選択肢の一つになりうると思われる。