抄録
糖尿病を合併した重症熱傷症例において,人工膵臓による血糖管理を行った1例を経験したので報告する。70歳,女性。糖尿病にてインスリン治療施行中であった。自宅風呂にて40%の熱傷を受傷した。受傷早期より経腸栄養を開始するも,敗血症を合併するとともに血糖管理が不良となり,第6病日より人工膵臓を導入した。以降,血糖値は150 mg/dl前後と良好に管理され,目標投与量の栄養摂取が可能となった。人工膵臓使用により低血糖発作を起こすことなく目標の血糖値に管理でき,また必要インスリン量も正確に把握できることから離脱後の血糖管理が容易であった。熱傷ではタンパク異化亢進抑制の観点などから早期からの経腸栄養が推奨されているが,糖尿病合併例では侵襲によるインスリン抵抗性の悪化も重なり,血糖値の管理に難渋することが多く,このような症例においては人工膵臓が非常に有用なツールであったと考えられた。