日本集中治療医学会雑誌
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22 巻, 6 号
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編集委員会より
集中治療の歴史
今号のハイライト
総説
  • 伊藤 隆史, 垣花 泰之
    2015 年22 巻6 号 p. 499-504
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    敗血症の際には,血管内血栓形成が進行し,しばしば播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)を合併する。血管内血栓形成は,血流を悪化させ,臓器障害の原因となりうることから有害事象と考えられているが,感染を局所に封じ込めるうえで重要な役割を果たしている可能性が指摘され,“immunothrombosis”という概念で注目されている。しかしながら,感染を局所に封じ込めることができずにimmunothrombosisが全身に拡散した場合,多臓器が障害され,生体防御機構であったはずの血栓形成が宿主にとってむしろ有害なものになってしまう。このように,immunothrombosisが全身に拡散して制御不能に陥った状況が,敗血症性DICの病態基盤であると考えられる。本稿では,immunothrombosisで重要な役割を果たしている好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps, NETs)の放出機序や意義について概説し,NETsから遊離してくると考えられている細胞外ヒストンが敗血症性DICの病態に及ぼす影響について考察する。
原著
  • 仙頭 佳起, 宮津 光範, 竹内 直子, 太田 晴子, 佐野 文昭, 上村 友二, 藤田 義人, 祖父江 和哉
    2015 年22 巻6 号 p. 505-511
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    【目的】当院ICUにおける小児veno arterial extracorporeal membrane oxygenation(VA-ECMO)の現状を把握し,課題を検討すること。【方法】2008年4月から2013年3月までの小児VA-ECMO症例を後方視的に検討した。【結果】症例はのべ40例(生後3日~6歳),先天性心疾患周術期が39例であった。予後は,離脱当日生存率75%,退院時生存率58%と諸外国のデータと同等であり,15年前の当院における退院時生存率21%と比較して有意に改善した。最近5年間で,離脱当日生存率は33%から100%へと年次変化しており経年的に改善したが,生存率に有意な変化はなかった。【結論】VA-ECMOによる治療成績は過去と比較して改善した。抗凝固療法の改善,さらなる技術向上,長期フォローなどが今後の課題である。
  • 橋本 一哉, 美馬 裕之, 川上 大裕, 植田 浩司, 下薗 崇宏, 山崎 和夫
    2015 年22 巻6 号 p. 512-518
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    【目的】肺動脈カテーテルを用いた持続的心拍出量(continuous cardiac output, CCO)モニタリングは心臓血管外科術後管理に有用である。また,深部静脈血栓予防に間欠的空気圧迫法(intermittent pneumatic compression, IPC)もよく用いられている。今回IPC中に持続的心係数(continuous cardiac index, CCI)が律動的な振動(以下,CCIオシレーション)を起こす症例を経験した。今回の研究の目的は①IPCによりCCIオシレーションが起こること,②IPC機器の機種によりCCIオシレーションの程度が異なることを証明することである。【方法】①一時的にIPCを停止した16症例において,CCIオシレーションをIPC作動時と非作動時で比較した。②IPC機器を変更した前後の36症例において,それぞれの機器を用いた群間でCCIオシレーションを比較した。【結果】①16症例すべてにおいてIPC作動中はCCIオシレーションは見られ,中断により消失した。②CCIオシレーションはIPCの機種変更により有意に変化した。【結論】CCIオシレーションはIPCにより引き起こされ,機種により程度が異なる可能性がある。
症例報告
  • 吉田 知由, 早川 峰司, 本間 多恵子, 小野 雄一, 和田 剛志, 柳田 雄一郎, 澤村 淳, 丸藤 哲
    2015 年22 巻6 号 p. 519-522
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    抗痙攣薬であるゾニサミドは,副作用として発汗障害を認めることが知られており,小児てんかんの分野での報告は散在するが,成人症例での報告は少ない。今回,頭部外傷の急性期から亜急性期にゾニサミドを使用した成人症例で,発汗障害からの高体温を来し,感染症などとの鑑別に苦慮した症例を2例経験した。症例1は21歳の男性,自動車事故で受傷し,入院22日目からゾニサミド300 mg/dayの使用を開始した。その後39℃の高体温を認めたが感染徴候はなく,ゾニサミドを減量したところ3日後に解熱した。症例2は25歳の男性,自動車事故で受傷し,入院3日目からゾニサミド300 mg/dayを使用していた。40℃近い高体温の持続を認めたためゾニサミドを中止したところ,3日後に解熱した。今回,ゾニサミドが原因と思われる高体温症例を経験したが,成人症例と言えどもゾニサミドによる発汗障害からの高体温を来しうるため,高体温時の鑑別として忘れてはならない。
  • 宮部 浩道, 後長 孝佳, 安藤 雅規, 波柴 尉充, 都築 誠一郎, 田口 瑞希, 植西 憲達, 武山 直志
    2015 年22 巻6 号 p. 523-526
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    水中毒に起因する低Na血症は,多量の利尿を引き起こし急激な血中Na濃度上昇をきたすことがあり,osmotic demyelination syndrome(ODS)を惹起する危険性がある。我々は水中毒に伴う低Na血症の急激な補正を防ぐ目的で,大量の自由水輸液を施行した症例と酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を併用した症例を経験した。いずれも血中Na濃度上昇は12 mmol/l/day以下に制御可能であった。水中毒に起因する重症低Na血症の治療に際し,酢酸デスモプレシンと3%高張食塩水を使用した治療法は,有効かつ安全であると考えられた。
  • 上村 友二, 宮津 光範, 祖父江 和哉
    2015 年22 巻6 号 p. 527-530
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    アルギニンバソプレシン(arginine vasopressin, AVP)V2受容体拮抗薬であるトルバプタンは,小児心不全においても有用である可能性があるが,小児への使用報告は少ない。今回,乳幼児におけるトルバプタンの効果と安全性に関して診療録より後方視的に検討した。症例は先天性心疾患(congenital heart disease, CHD)の周術期,もしくはCHDを既往にもつ児の心不全5例で,使用目的は他の利尿薬で効果が得られない水分貯留であった。投与開始後より尿量増加,体重減少を認めた。投与量は0.1~0.3(中央値0.1)mg/kg/dayであり,これまでの小児における報告より少なく,小児ではより低用量投与で効果が得られる可能性が考えられた。
  • 武井 祐介, 小林 孝史, 本田 泉, 千葉 聡子
    2015 年22 巻6 号 p. 531-535
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy, CIDP)の経過中にたこつぼ型心筋症を発症した症例を経験した。56歳,女性。45歳よりCIDPを発症し,以後数回の増悪・寛解を繰り返している。両下肢筋力低下と左顔面神経麻痺をきたし,CIDP急性増悪として入院となった。入院翌日に四肢麻痺,呼吸筋麻痺が出現し,ICUにて人工呼吸管理を行った。同時に免疫グロブリン大量療法を開始した。ICU入室後,循環動態は大きく変動した。ICU入室3日目に,心エコーで壁運動異常を認めた。心基部は正常収縮,心尖部は無収縮であり,特徴的な所見からたこつぼ型心筋症と診断した。また同時に40℃を超える発熱を認めた。ICU入室7日目に壁運動異常が改善し,循環動態が安定すると同時に,発熱や四肢麻痺も改善傾向を示した。CIDPは類縁疾患であるGuillain-Barré症候群とは異なり重篤な自律神経障害は稀であるが,本症例では重篤な自律神経障害が生じたことで,たこつぼ型心筋症を発症した可能性が示唆された。
  • 村田 雄哉, 松宮 直樹, 荒木 祐一, 吉田 美伽, 尾西 恵美菜, 関谷 芳明, 山田 均
    2015 年22 巻6 号 p. 536-539
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    16歳,男性が縊頸による心肺停止後に自己心拍再開し搬送された。心停止から自己心拍再開までの時間は短くとも18分であり,来院時のGCSは3点であった。入院後,低体温療法を施行し,その後も継続する薬剤抵抗性の高熱と意識障害に対して第49病日よりアマンタジンを投与し,解熱と意識状態の改善が得られた。リハビリテーションを経て,入院後4ヵ月で神経学的に回復し歩行退院した。縊頸による心停止・心拍再開後で予後不良と考えられた症例が,歩行退院という良好な転帰をたどった。
  • 高橋 学, 柴田 繁啓, 菅 重典, 小野寺 ちあき, 増田 卓之, 佐藤 諒, 秋丸 理世, 遠藤 重厚
    2015 年22 巻6 号 p. 540-543
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    糖尿病を合併した重症熱傷症例において,人工膵臓による血糖管理を行った1例を経験したので報告する。70歳,女性。糖尿病にてインスリン治療施行中であった。自宅風呂にて40%の熱傷を受傷した。受傷早期より経腸栄養を開始するも,敗血症を合併するとともに血糖管理が不良となり,第6病日より人工膵臓を導入した。以降,血糖値は150 mg/dl前後と良好に管理され,目標投与量の栄養摂取が可能となった。人工膵臓使用により低血糖発作を起こすことなく目標の血糖値に管理でき,また必要インスリン量も正確に把握できることから離脱後の血糖管理が容易であった。熱傷ではタンパク異化亢進抑制の観点などから早期からの経腸栄養が推奨されているが,糖尿病合併例では侵襲によるインスリン抵抗性の悪化も重なり,血糖値の管理に難渋することが多く,このような症例においては人工膵臓が非常に有用なツールであったと考えられた。
研究速報
  • 山川 尚子, 沓澤 智子, 栗田 太作, 小澤 壯治
    2015 年22 巻6 号 p. 545-547
    発行日: 2015/11/01
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    Purpose: The purpose of this study was to simultaneously measure time course changes in pressure of compression stocking and oxygenation state of the gastrocnemius muscle (MG) during passive dorsiflexion in patients who admitted to the ICU after surgery. Methods: Participants comprised five patients in post-surgical state of esophageal cancer (mean age, 59.4±6.1 years). Patients were performed exercise consisted of 10 cycles involving passive dorsiflexion and release until a few hours after surgery. Changes in oxygenated hemoglobin (oxy-Hb), deoxygenated hemoglobin (deoxy-Hb) and total hemoglobin (t-Hb) of medial belly of the MG were measured by near infrared spectroscopy. Changes in pressure of compression stocking was simultaneously measured at the lateral side of the MG. Results: The compression pressure was 20.4±1.6 mmHg at rest and increased up to 4.2±3.2 mmHg during dorsiflexion. oxy-, deoxy-, and t-Hb decreased during dorsiflexion, and recovered during release. t-Hb after 5-min passive exercise significantly decreased as compared with those before exercise. Conclusions: Increase in compression pressure during dorsiflexion may induced by changes in shape of calf. Passive exercise for 5 min might decrease muscle blood volume in patients while wearing compression stockings studies.
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