抄録
Staphylococcus lugdunensis(S. lugdunensis)は,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci, CNS)の一種で,1988年に初めて報告されて以来,皮膚や軟部組織感染部位から分離され,敗血症,髄膜炎や心内膜炎などの重篤な感染症の原因菌として重要視されている。今回我々は,S. lugdunensisによる化膿性脊椎炎に自己弁感染性心内膜炎を合併した一例を経験したので報告する。症例は75歳,女性。化膿性脊椎炎に対して経皮的髄核摘出術を施行し,抗菌薬治療に加え,感染性心内膜炎に対して大動脈弁置換術および僧帽弁形成術を施行したが,S. lugdunensisによる心内膜炎は弁破壊性が強く,術後高度の僧帽弁逆流が出現し再手術となった。S. lugdunensisは,病原性の強さや菌の生化学的性状が,Staphylococcus aureusと類似しており,誤同定されることがある。他のCNSと比較して病原性が高いため,重症化する可能性が高く,集学的治療による適切な初期対応が肝要である。