日本集中治療医学会雑誌
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24 巻, 1 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
編集委員会より
今号のハイライト
症例報告
  • 峯岸 慎太郎, 持田 泰行, 降旗 修太, 市川 晋也, 福岡 雅浩, 神原 かおり, 新浪 博士, 梅村 敏
    2017 年 24 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/01/17
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus lugdunensisS. lugdunensis)は,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci, CNS)の一種で,1988年に初めて報告されて以来,皮膚や軟部組織感染部位から分離され,敗血症,髄膜炎や心内膜炎などの重篤な感染症の原因菌として重要視されている。今回我々は,S. lugdunensisによる化膿性脊椎炎に自己弁感染性心内膜炎を合併した一例を経験したので報告する。症例は75歳,女性。化膿性脊椎炎に対して経皮的髄核摘出術を施行し,抗菌薬治療に加え,感染性心内膜炎に対して大動脈弁置換術および僧帽弁形成術を施行したが,S. lugdunensisによる心内膜炎は弁破壊性が強く,術後高度の僧帽弁逆流が出現し再手術となった。S. lugdunensisは,病原性の強さや菌の生化学的性状が,Staphylococcus aureusと類似しており,誤同定されることがある。他のCNSと比較して病原性が高いため,重症化する可能性が高く,集学的治療による適切な初期対応が肝要である。
  • 京極 都, 竹内 宗之, 橘 一也, 清水 義之, 籏智 武志, 文 一恵, 井坂 華奈子, 藤原 太
    2017 年 24 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/01/17
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性心疾患術後の抜管後の小児における経鼻高流量酸素療法を利用して行う一酸化窒素(nitric oxide, NO)投与の有用性と安全性を明らかにする。【方法】術後抜管後にhigh-flow nasal cannula(HFNC)を用いてNO投与を行った5症例(Fallot四徴症根治術後2例,Fontan術後3例),年齢27(19~40)ヵ月,体重12.5(9~16)kgを対象として後方視的な検討を行った。評価項目は,NO投与前後の脈拍,平均血圧,P/F比,尿量,回路内のNO濃度,環境二酸化窒素(nitrogen dioxide, NO2)濃度とした。【結果】NO投与前後で脈拍,平均血圧,尿量に有意な変化はなかったが,有意にP/F比の上昇が得られた。HFNC回路内のNO濃度の計算値と実測値との誤差は4~16%であった。また,投与期間中のICU内の環境NO2濃度は0.010~0.018 ppmであった。【まとめ】患者の吸入NO濃度は実測できていないが,先天性心疾患術後に経鼻高流量酸素療法を利用して行うNO吸入療法では,回路内に安定したNO濃度を供給でき有用であった。環境NO2濃度も環境基準を超えることはなく,安全であった。
  • 麻生 将太郎, 大江 恭司, 前島 克哉, 今長谷 尚史, 神田 潤, 伊藤 史生, 糟谷 美有紀, 伊良部 徳次
    2017 年 24 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/01/17
    ジャーナル フリー
    後天性第V因子インヒビターは様々な原因で抗第V因子抗体が出現し,易出血性をきたす稀な疾患である。交差混合試験,ループスアンチコアグラント,凝固因子活性,凝固因子インヒビターを測定して診断される。治療は止血に新鮮凍結血漿や血小板製剤の投与,インヒビター除去に免疫抑制薬が投与される。無効な場合は,血漿交換を行う。本症例は直腸癌術後,末期腎不全の55歳男性が,体表の複数の血腫を主訴に,後天性第V因子インヒビターと診断された。心タンポナーデが出現し,血腫増大による貧血進行のため,高用量メチルプレドニゾロン療法,リツキシマブや輸血の大量投与を施行しても出血を制御できず,血漿交換を施行した。合計9回の血漿交換を施行したが,出血を制御できず,カテーテル感染による敗血症を合併し,死亡した。血漿交換を施行しても出血を制御できない場合,他の治療法の併用を早期に検討する必要がある。
  • 水野 祥子, 貝沼 関志, 西脇 公俊
    2017 年 24 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/01/17
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性。突然の左腰背部痛のため当院に救急搬送され,腹部大動脈瘤破裂の診断で緊急腹部大動脈人工血管置換術が行われた。術後9日目に施行したCTにて右内頸静脈血栓を認めたためヘパリン持続静注を開始したが,術後10日目に血小板数が前日の40%に減少しており,HIT(heparin-induced thrombocytopenia)の可能性を考えてすべてのヘパリンを中止した。術後11日目にHIT抗体強陽性との結果を受けアルガトロバンの持続静注を開始したが,APTT延長が続いたため,アルガトロバンを漸減,術後15日目には中止せざるを得なかった。その後も抗凝固療法が行えないまま術後59日目に死亡した。本邦でHIT治療薬として承認されているのはアルガトロバンのみであるが,APTTによってその投与量を決定するため,本症例のように凝固障害に陥ると減量が必要となりHITの病態悪化を招く可能性がある。HIT-associated consumptive coagulopathyに陥った場合の治療法は確立されておらず,今後の課題である。
  • 佐倉 考信, 清水 一好, 廣井 一正, 鈴木 聡, 林 真雄, 賀来 隆治, 森松 博史
    2017 年 24 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/01/17
    ジャーナル フリー
    妊娠中の急性膵炎は稀な疾患であるが,発症すると母体,胎児ともに予後が悪い。著明な高トリグリセリド(triglyceride, TG)血症による急性膵炎を発症した妊婦に対して,LDL(low density lipoprotein)吸着療法を施行し良好な経過をたどった症例を経験した。症例は35歳,妊娠39週の女性。TG 11,936 mg/dlの著明な高TG血症を認め,造影CTにて重症急性膵炎を疑う所見を認めた。帝王切開にて妊娠を中断の後,ICU入室となり急性膵炎,高TG血症に対する治療を開始した。高TG血症に対してLDL吸着療法を3回施行し,TG値は1,764 mg/dlまで低下した。その後,膵炎に対する保存加療が継続され,第15病日に退院した。高TG血症起因性急性膵炎において,高TG血症の治療併用は重要である。本疾患を合併した妊婦に対して,血漿交換と比較して合併症頻度の低いLDL吸着療法を選択し,安全に施行できた。
短報
レター
委員会報告
  • 一般社団法人日本集中治療医学会/一般社団法人日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン作成委員会
    2017 年 24 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2017/01/01
    公開日: 2017/01/17
    ジャーナル フリー
    日本集中治療医学会/日本呼吸療法医学会ARDS診療ガイドライン作成委員会は,今回,日本呼吸器学会ARDS診療ガイドライン作成委員会と合同で「ARDS診療ガイドライン2016」を作成し公開した。今回は13の診療疑問(clinical question)について,国内でもまだ取りあげられることの少ないGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)systemを用いたシステマティックレビューとその推奨度決定の手法を取り入れた。これにより,従来に比して信頼性の高い診療ガイドラインを作成することができた。
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