抄録
劇症型心筋炎に対して動静脈体外式膜型人工肺(veno arterial extracorporeal membrane oxygenation, VA-ECMO)を施行し,救命し得た6歳小児の一例を経験した。本患児は4年前にも劇症型心筋炎に罹患し,当院でECMOを施行した既往があった。今回は感冒様症状が増悪傾向であり,劇症型心筋炎の既往もあったことから,当院へ搬送となった。循環不全が進行しショックを呈したが,あらかじめラインを確保しておいたため,急変時に速やかなECMO導入が行えた。通常,小児(特に25 kg以下の児)のVA-ECMOにおいて,送血は内頸動脈が選択されるが,今回の対象患児は挿管されておらず,浅鎮静下での頸動脈穿刺手技のリスクを考慮し,我々は大腿動脈を選択した。大腿動脈送血における下肢虚血に対しては逆行性下肢強制送血を行い,その予防に努めた。小児劇症型心筋炎の症例経過とVA-ECMO早期導入のための工夫,および下肢虚血の予防法について述べた。