日本集中治療医学会雑誌
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稀な損傷形態を呈した外傷性大動脈弁閉鎖不全の1症例
石山 泰三高田 佳史田中 信大進藤 直久武井 康悦山科 章池田 克介平山 哲三
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2003 年 10 巻 1 号 p. 17-22

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抄録
稀な損傷形態を認めた外傷性大動脈弁閉鎖不全症の1例を報告する。53歳男性。生来健康。交通事故にて全身を強打し,多発外傷のため当院に緊急入院となる。入院経過中に心拡大および拡張期逆流性雑音を認めた。第18病日の心エコー図検査にて高度な大動脈弁逆流を認めた。心疾患の既往がないこと,弁尖に疣贅がないこと,胸部造影CTにて大動脈の拡大や解離を認めないことから,外傷性大動脈弁閉鎖不全症と診断した。第119病日に大動脈弁置換術を施行した。手術所見では大動脈弁尖に損傷はなく,無冠尖-左冠尖間の交連部の剥離を認めるのみであった。術後経過は良好で,第140病日に独歩退院した。本症例の損傷機転として,前胸部強打による大動脈弁輪の変形により無冠尖が引き伸ばされ,そこに急激に上昇した大動脈圧の負荷がかかり,左冠尖との交連部が大動脈壁より剥離したものと推測された。外傷による大動脈弁単独損傷は,わが国でも過去に22例と少ないが,さらに本例は既報の例にない特殊な損傷形態を呈した稀な症例であった。
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