抄録
米国疾病対策センター(CDC)の手術部位感染(SSI)防止ガイドライン(1999年版)に基づいて2種類の予防的抗菌薬を選択し,ガイドラインに従った投与法で心臓,胸部大血管手術に適用し,SSIの発症率を比較検討した。1999年9月から2002年1月に同一術者が担当した連続120例を対象とした。抗菌薬の投与は執刀1時間前と,術後1回のみとした。前期59例にはSBT/ABPCを,後期の61例にはCEZを用いた。SSIの発症率はSBT/ABPC群で3.4%,CEZ群で9.8%であった(NS,P=0.147)。虚血性心疾患に限った場合もSBT/ABPC群で4.0%,CEZ群で14.6%であった(NS,P=0.17)。CEZ群のSSI発症率は高値で,SBT/ABPC群の発症率は容認できる値であった。また,抗菌薬の投与期間を減らすことで,菌交代現象による多剤耐性菌感染症を抑制できた。