抄録
症例は35歳男性,190cm,100kgで糖尿病を合併していた。頭痛,嘔吐を主訴として救急搬送され呼吸停止したために心肺蘇生術を施行しながらICU入室した。小脳梗塞,脳浮腫のため後頭蓋下開頭術を亜酸化窒素,酸素,セボフルラン,フェンタニルとベクロニウムの全身麻酔で行った。術後第1病日に不穏のため鎮静目的でプロポフォールを3mg・kg-1・hr-1で開始した。術前119U・l-1だったCKは第3病日には2,381U・l-1,第4病日に2,334U・l-1と高値を示したためプロポフォール投与は中止した。ポートワイン尿はみられず,体温は36.2~38.7℃の範囲で変動した。確定診断のために提出した尿中ミオグロビンは404ng・ml-1と高値を示し横紋筋融解症が証明された。退院時のCKと尿中ミオグロビンは正常範囲内に復した。ICUで小児に長期多量投与されたプロポフォール(日本では小児への投与は保険上認められていない)が横紋筋融解症を起こした報告が散見される(Hanna JP, et al. Neurology 1998; 50: 301,他)。今回,ICUでの鎮静目的で投与された成人最低維持量のプロポフォール(3mg・kg-1・hr-1)が原因と考えられる。一過性の血清CK上昇および尿中ミオグロビン出現で証明された成人横紋筋融解症の1例を報告し,定期的なCK検査の重要性を強調した。