抄録
重症破傷風による横紋筋融解を来たし急性腎不全に陥った症例を経験した。症例は47歳,男性。左足背挫創の受傷後8日目に開口障害,項部硬直にて発症し入院となった。第2病日より意識障害,全身痙攣,著明な心拍数・血圧変動が出現しICUに転棟となった。著明な高クレアチンホスホキナーゼ(creatine phosphokinase, CPK)血症,高ミオグロビン血症を呈し,急性腎不全に陥ったため持続鎮静,人工呼吸下に持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration, CHDF)を開始した。CHDF開始後,血中ミオグロビン値,尿中ミオグロビン値は経過とともに低下傾向を認めたが,長期間にわたって比較的高値で推移した。第23病日より尿量の増加,血中blood urea nitrogen (BUN), creatinine (Cr)値の低下を認めたためCHDFより離脱することができた。重傷破傷風患者では横紋筋融解症による急性腎不全を考慮した全身管理が必要と考えられた。