抄録
40℃以上の発熱とともに,急速に意識状態の悪化を来したインフルエンザB抗原陽性の4歳患児に,抗ウイルス療法,軽度低体温(34~35℃)療法,抗サイトカイン療法を施行し,症状の著明な改善を認めた。入院時認めた脳浮腫は4日目に改善傾向を認めたため,低体温療法は入院5日目に中止し,8日目に人工呼吸器を離脱した。10日目のsingle photon emission computed tomography (SPECT)とpositron emission tomography (PET)検査において,入室時と比してそれぞれ,基底核・視床の血流と糖代謝に著明な改善を認めた。患児は17日目に後遺症なく退院した。重症インフルエンザ脳症に対し,抗ウイルス療法,低体温療法,抗サイトカイン療法の併用療法が有用と思われる。