日本応用きのこ学会誌
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Print ISSN : 1345-3424
スギ鋸屑を利用したヌメリスギタケPholiota adiposaの栽培
金子 周平
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2003 年 11 巻 4 号 p. 183-192

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抄録

ヌメリスギタケ野生株の二核菌糸体は5〜30℃で成長し,至適培養温度は26℃前後であった.5℃では各系統とも1mm/日程度の緩やかな成長がみられ,35℃ではある系統は成長できず,40℃ではすべての系統が成長できず殆ど5日間で枯死したが,10日以上生存する系統もあった.至適培地pHは6.5前後であった.培養後の培地pH値はおよそ3.5-5.5に収束する傾向にあった.スギ鋸屑の炭素(C)窒素(N)の含有率は,特にNについて,クヌギ,コナラより低い値であったが,米糠を混合することによりC/N比に大きな差はなくなった.さらにコーンコブ,綿実殻を混合することによりC/N比は低下した.スギ鋸屑と米糠を混合した場合の培地pHは5.7であり,ブナや他の広葉樹の培地と大きな差はなかった.スギ鋸屑に米糠を混合した培地は,瓶に詰めて殺菌した後の,瓶内上下の水分差が大きくバランスが悪いため栽培培地に不適と考えられたが,コーンコブミールさらに綿実殻を混合することにより水分バランスは良くなり,これによる二核菌糸体の培養で成長速度は速くなった.スギ鋸屑を利用したヌメリスギタケ栽培では,米糠のみの混合では収量が少ないが,これにコーンコブと綿実殻を混合した培地(500g/800ml瓶)から,2回発生で150g以上の収量が得られ,これらの混合が効果的であった.瓶の比較では,収量の点では800ml広口瓶が850ml瓶に優るが,形質の点では後者が柄が長く,有利と考えられた.

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© 2003 日本きのこ学会
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