2005 年 12 巻 3 号 p. 197-199
抗精神病薬チオリダジンの致死的副作用としてQT延長と心室性不整脈がある。非定型抗精神病薬であるオランザピンではこの副作用は報告されていない。我々は常用量のチオリダジンと極量以上のオランザピンの併用によりQT延長と心室性不整脈を来した症例を,両薬物の血中濃度と併せて報告する。35歳の女性が自殺目的でチオリダジン200mg,オランザピン80mgを内服し昏睡状態で搬送された。心電図上QTcが670msecと著明に延長しており,多形性心室心拍と心室細動に対して除細動が必要であった。QTcは内服から1週間で正常化した。患者が内服したチオリダジン200mgは常用量であるにも関わらず,経過中のチオリダジン血中濃度は異常高値を示していた。これは大量のオランザピンがチオリダジンと肝薬物代謝酵素CYP2D6を競合的に競合した結果と推測された。我々が検索しえた限り,チオリダジンとオランザピンの併用による重篤な副作用の報告は本稿が初めてである。