抄録
非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation, NPPV)の本邦での使用実態を調査するために症例登録を行った。調査期間は2004年7月から9月までの3ヶ月間で,データベースファイルを参加施設に配布し回収することで行った。86施設が参加し497例の登録があった。全症例での挿管回避率は83.8%で,病院死亡率は31.0%であった。NPPV施行日数は9.2±18.7日であった。経験による施設の差を検討するために登録患者数10例未満の施設と10例以上の施設で比較検討したが,APACHE IIスコア,人工呼吸器初期設定,NPPV実施日数,気管挿管回避率,死亡率について差はなく,気管挿管直前の状態にも有意な差は認めなかった。Acute respiratory distress syndrome (ARDS),術後,肺炎で挿管患者と挿管回避患者を比較すると,NPPV終了直前のP/F比と呼吸数に,chronic obstructive pulmonary diseases (COPD)では呼吸数のみに有意差を認めた。NPPV実施中に鎮静薬を使用した症例で有意に気管挿管の割合が多かった。集計結果からは疾患別NPPVの有効性などの結論を導くことはできないものの,NPPVの使われ方に施設間で大きな差がないことが判明した。