抄録
成人呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の肺胞洗浄液(BALF)中のPhospholipase A2(PLA2)の活性と性状を調べた。PLA2の活性はARDSの重症度と正相関を示し,ヘパリンセファロースカラムにて2つのピークを示した。ヘパリン吸着部分はARDS患者のみにみられ,その性状は炎症亢進の生理機能を持つgroup II PLA2に酷似していた。ヘパリン非吸着部分をさらに精製したところ,従来の高分子型とは異なるPLA2でARDS患者に高い活性を持つ高分子,カルシウム依存性のPLA2が同定された。しかし,これは中性至適pH(従来の高分子型の至適pHは9.0)で,既存の抗血清と免疫沈降を示さなかった。従って,この新しいタイプのPLA2がARDSの重症かつ複雑な病態生理に関与するものと推定された。