日本集中治療医学会雑誌
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妊娠・産褥期の脳血管障害と集中治療
福家 伸夫
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2000 年 7 巻 2 号 p. 89-96

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抄録

産科領域での脳血管障害は多いものではないが,妊娠・産褥期には通常より発生頻度が高まるし,母体死亡の非産科的原因として重要な位置にある。出血性疾患には動脈瘤破裂,脳動静脈奇形によるものが多く,特に動脈瘤破裂は妊娠後期に好発し,梗塞性疾患は産褥期に多い。血管障害の外科的治療は非妊婦と同じ適応基準で施行でき,そのために必要な放射線学的検査も実施する。しかし保存的に管理する場合,各種薬物が胎児に与える影響を考慮する必要がある。投薬を必要最小限にするため動脈圧,頭蓋内圧,胎児心音を持続的にモニタする。軽度の過換気,低体温は安全である。麻酔管理など短時間の症例報告は多いが,ICUでの長期管理での安全性に関する資料は乏しい。分娩様式は血管障害の種類と治療様式に依存するが,母体が安定ならば胎児が十分成熟するまで待機する。脳死に陥った母体での妊娠継続の是非についての,倫理的な問題はまだ未解決である。

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