日本集中治療医学会雑誌
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7 巻, 2 号
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  • 福家 伸夫
    2000 年 7 巻 2 号 p. 89-96
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    産科領域での脳血管障害は多いものではないが,妊娠・産褥期には通常より発生頻度が高まるし,母体死亡の非産科的原因として重要な位置にある。出血性疾患には動脈瘤破裂,脳動静脈奇形によるものが多く,特に動脈瘤破裂は妊娠後期に好発し,梗塞性疾患は産褥期に多い。血管障害の外科的治療は非妊婦と同じ適応基準で施行でき,そのために必要な放射線学的検査も実施する。しかし保存的に管理する場合,各種薬物が胎児に与える影響を考慮する必要がある。投薬を必要最小限にするため動脈圧,頭蓋内圧,胎児心音を持続的にモニタする。軽度の過換気,低体温は安全である。麻酔管理など短時間の症例報告は多いが,ICUでの長期管理での安全性に関する資料は乏しい。分娩様式は血管障害の種類と治療様式に依存するが,母体が安定ならば胎児が十分成熟するまで待機する。脳死に陥った母体での妊娠継続の是非についての,倫理的な問題はまだ未解決である。
  • 堀田 国元
    2000 年 7 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    0.1%以下の薄い食塩水を陽極と陰極が隔膜で仕切られた電解槽で電気分解すると,陽極側に低pH(2.2~2.7)で有効塩素濃度20~60ppmの電解水を生成する装置が開発されている。強酸性電解水と呼ばれるこの電解水は,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や薬剤耐性緑膿菌など耐性菌を含む広範な病原細菌に著効を示す。主たる殺菌基盤は次亜塩素酸で,その殺菌機構にはヒドロキシラジカルが主役的に関与すると考えられている。強酸性電解水は,活性は高いが不安定なために市販されておらず,電解装置を現場に設置してユーザーが必要なときに作製し,新鮮なうちに使用する。すなわち,次亜塩素酸の良さを活かし,欠点を克服した新技術といえる。厚生省が手指や内視鏡の洗浄消毒を認めているほか,環境や血液透析機,さらに褥瘡や創部などの洗浄消毒に使用されている。手荒れが少なく,毒性や濃度も低いので,人にも環境にもやさしいなど利点が多い。タンパク性有機物に弱いが,使用対象を考慮した使い方により洗浄消毒の実効を上げられるので,今後利用が拡大すると思われる。
  • 間欠的強制換気と圧支持換気の比較
    村田 克介, 窪田 達也
    2000 年 7 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    間欠的強制換気(intermittent mandatory ventilation, IMV)と圧支持換気(pressure support ventilation, PSV)による人工呼吸からのウイニングが,自発呼吸と患者呼吸仕事量に及ぼす影響について比較検討した。IMVでは強制換気回数を,PSVではサポート圧を段階的に減少させた。ウイニングにより人工呼吸器が患者に与える仕事量は両群とも段階的に減少した。しかし,IMV,PSVによるウイニングが患者に及ぼす影響は全く異なっていた。ウイニング中,両群間の患者呼吸仕事量に有意な差を認め,IMV群では,ウイニング開始直後から急速に増加したが,PSV群では,段階的に増加した。IMV群の呼吸仕事量の増加の原因は主に,ウイニング開始とともに完全な自発呼吸が開始されることと,強制換気が呼吸仕事量の軽減に寄与しないことであった。また,IMV群における呼吸仕事量の増加の一因として,人工呼吸によって生じる負荷呼吸仕事量の増加,内因性呼気終末陽圧(intrinsic PEEP)の発生が関与していた。PSVによるウイニングは呼吸仕事量軽減と呼吸仕事量の段階的負荷を可能にするという点で優れていると考えられた。
  • 股関節離断術により救命しえた1症例
    丹野 英, 大江 恭司, 清水 可方, 村田 克介, 窪田 達也, 鈴木 潤
    2000 年 7 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    非A群レンサ球菌感染症によるtoxic shock like syndrome (TSLS)は,極めて稀にしか発症しないが,発症すると重篤な経過をとる場合がある。今回,骨髄異形性症候群の患者においてG群レンサ球菌による筋炎からTSLSに陥り,下肢切断により救命しえた症例を経験した。症例は64歳男性,左大腿部化膿性筋炎により敗血症性ショックを合併し,ICUに収容した。創部の細菌培養にてG群レンサ球菌が同定され,アンピシリン/スルバクタム,クリンダマイシン,トブラマイシンおよびγ-グロブリン製剤の投与を行ったが,皮膚の発赤腫張は左腰部から左足先端まで広がった。全身状態が悪化し,肝機能障害および播種性血管内凝固症候群を呈したため,第7病日,股関節離断術を施行した。全身状態は著明に改善しICUを退室できた。G群レンサ球菌感染症においても,A群レンサ球菌によるTSLSと同様な経過をとる可能性があるため,早期からの根治的治療が必要である。
  • 田中 信彦, 長田 直人, 日高 奈巳, 高崎 眞弓
    2000 年 7 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    集中治療室内で行った塗抹検査で,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)呼吸器感染を疑い,治療しえた2症例を報告する。症例は67歳(患者1)と65歳(患者2)の男性で,間質性肺炎による低酸素血症のため人工呼吸管理中であった。併発したグラム陰性桿菌による肺炎に対してセフェム系抗生物質を長期間,静脈内投与した。この間,気道分泌物の塗抹検査でグラム陽性ブドウ球菌と白血球の貪食像を多数認めた。アンピシリンまたはホスホマイシンを投与後24~48時間の塗抹検査で,細菌数が減少しなかったため,MRSAによる感染も疑った。患者2では,バンコマイシンを投与した。中央検査部でMRSAを同定できたとき,ベッドサイドの塗抹検査では細菌を認めなかった。ベッドサイドでの塗抹検査が,MRSAによる感染の推定と抗菌薬の効果判定に有用であった。
  • 中永 士師明, 田中 博之, 稲葉 英夫
    2000 年 7 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    外傷性窒息(traumatic asphyxia, TA)の受傷原因としては重量物の下敷き,交通事故などが多い。われわれはトラクター外傷による1例を経験した。患者は71歳,男性で,救出時,呼吸停止状態であり,来院時,意識レベルはGlasgow coma scale 7 (E2V1M4)であったため,中程度の脳低温療法を施行した。経過は良好であった。本例はビニルハウスの鉄パイプの間に側胸部が挟まり,かつ,トラクターによって前胸部を圧迫されるという胸郭の運動が3方向から妨げられる受傷機転であった。本例の意識障害の原因としてTAに伴う脳内静脈圧上昇によるものと呼吸停止に伴う低酸素性脳症の両者が関与していると考えられた。
  • 坪井 英之, 武川 博昭, 近藤 潤一郎, 曽根 孝仁
    2000 年 7 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    冠攣縮性狭心症を合併した褐色細胞腫症例を経験した。患者は20歳女性。胸部不快感,動悸を訴え,プレショック状態で受診した。劇症型心筋炎,心筋症,膠原病,虚血性心疾患などの鑑別のため冠動脈造影(coronary angiography, CAG)を施行した。冠動脈は正常であったが,アセチルコリン(acetylcholine,Ach)負荷で著明な冠攣縮が誘発され,冠攣縮性狭心症と診断した。その後時々,高血圧発作があり再入院となった。検査の結果,左傍神経節腫(paraganglioma)と診断され,腫瘍摘出術が施行された。術後2ヵ月目にCAGを施行したが,Achに対する易攣縮性は著明に改善していた。われわれはカテコラミン心筋症(catecholamine induced cardiomyopathy)の要因の1つと考えられる冠攣縮を初めてCAGで証明した。またその機序として,高カテコラミンによるα1刺激以外に直接的なカテコラミンによる内皮機能障害の可能性も示唆された。
  • 成尾 浩明, 平部 俊哉, 卜部 浩俊, 大倉 俊之, 楠元 寿典, 井上 卓也, 濱川 俊朗, 高崎 眞弓
    2000 年 7 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Aeromonas sobriaによる重症軟部組織感染症例を経験した。患者は49歳の男性で,アルコール性肝障害の既往があった。にぎりずしを食べた翌日より四肢に腫脹と疼痛が現れ,2日後にはショック状態に陥った。ICU到着時,不穏状態で,体温39.8℃,脈拍116min-1,血圧は92/50mmHgであった。全身にチアノーゼを,眼球結膜に黄染を認めた。四肢は腫脹が著明で,右大腿に握雪感を伴う皮下出血斑を認めた。皮下組織よりグラム陰性桿菌を認めたので,イミペネムとミノサイクリンを投与し,エンドトキシン吸着療法を行ったが急性腎不全となり,初発症状より72時間後,ICU収容28時間後に死亡した。血液,喀痰,下肢皮下の膿の培養でAeromonas sobriaを検出した。病理解剖で肝硬変ならびに軟部組織,消化管全般に壊死を認めた。また,結腸の固有層,粘膜下層に多数のグラム陰性桿菌を認めた。Aeromonas sobriaによる軟部組織感染症は,免疫抑制状態の人や肝硬変患者では致命的になる可能性があるので注意が必要である。
  • 太田 ひとみ, 大塚 祥子, 田附 真弓, 櫻井 繁子, 今泉 均
    2000 年 7 巻 2 号 p. 141
    発行日: 2000/04/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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